19年日本シリーズではソフトバンクに4連敗。雪辱を果たすためには、目先の戦力にこだわる必要性も生じた。シーズン中にも関わらず、7月に楽天から同じ左腕の高梨雄平を補強したのも頷ける。勝ち進んだ先にソフトバンクなど、パ・リーグの強力左打者を見据えていたのもあるはずだ。

「今は野手の方が(練習は)多い。打撃の方が比率が高いです。振らないといけない立場なので。ここからまた走塁とかやらないといけないし、サインも覚えないといけない。もっと細かいところも、覚えていかないといけないので、やることが多いです」(戸根/昨年7月25日更新・巨人公式YouTube動画)

 島根・石見智翠館高(入学時は江の川高)時代は通算39本塁打と、もともと打撃にも定評があった。二刀流挑戦が発表されてからは、主に野手の練習に打ち込んだ。本来なら投手としても、リハビリを経て復帰しなくてはならないのだが、それすら忘れさせるような熱心さだった。

「再び投手で行くと聞いて驚いた。実戦で結果も出始めていたので、野手として調査していた。ヤクルトの雄平のように、中核打者になれる可能性も感じた。投手としてコンディションが良くなったのだろうが、どっちつかずの印象は残った。パ・リーグでDHとして挑戦しても面白かっただろうね」(パ・リーグ球団スコアラー)

 ヤクルト・雄平はプロ7年目のオフに投手から野手に転向。野手5年目となる14年には、外野手部門でベストナインを受賞するまでになった。戸根は野手として出場した昨年の二軍戦では、13試合出場、33打数5安打、2打点、打率.152と結果はまだ出ていなかった。

大谷翔平(エンゼルス)が苦労しながらも二刀流を継続できているのは、先発投手だから。ブルペン投手の戸根の場合、調整等を考えても実現性は低かった。リハビリの一環とともに、話題性重視だったのも否定しようがない。変則左腕で力がある投手なので、完全復帰すれば米国挑戦も面白いと見ている」(MLBアジア地区担当スカウト)

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役割的にも二刀流は難しかった