週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「ペースメーカー治療」の解説を紹介する。

【図解】ペースメーカー治療の選択の流れはこちら

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 マラソンの途中などに、心拍数が極端に高まる「心室頻拍」や、突然発作的に心臓の拍動が止まる「心室細動」を発症すると、意識を失ったり、心停止に至ったりすることがある。

 このような突然死に関わる症状を、致死的不整脈と総称する。その原因は、心筋への血流不足などにより、突然、心筋に多くの無秩序な電気刺激が起こり、心室(心臓の下側にある2つの部屋)が協調を失って痙攣することによる。

 この状態が続くと心停止を起こしてしまうため、町中などで発症した場合には、電気ショックで心肺蘇生するAED(自動体外式除細動器)で応急治療をおこなうが、その後はいつ起こるかわからない心停止を防ぐために、機器を体内に植え込む治療をおこなう。

 ただし、電気ショックを発する機器を体内に植え込む治療であるため、患者にとっては日常生活の質が低下しないように、電気ショックの頻発を防ぐなど、細かくフォローアップをしてもらうことが大切だ。また、からだへの負担を考えると、不測の心停止など、生命に関わるような不整脈の危険性が高い患者へ適切に適応することが重要だ。

 機器を植え込む治療には、脈が極端に遅くなる徐脈に対する「ペースメーカー」、上記のように脈が極端に速くなる頻脈に対する「ICD(植え込み型除細動器)」「S−ICD(完全皮下植え込み型除細動器)」「CRT−D(両室ペーシング機能付植え込み型除細動器)」といった植え込み型除細動器という機器での治療がある。本誌では、これらの治療を総称してペースメーカー治療と呼んでいる。

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