「最近では無症候性(症状がない)の患者さんは、侵襲的な治療であるカテーテルアブレーションを希望されないことも多いですが、無症候性の患者さんのほうが長期予後が悪いことも報告されており、長期的な観点からカテーテルアブレーションの有効性や安全性について説明します」(山内医師)

■発作性の場合、再発率は低い

 カテーテルアブレーションをやるべきかどうかは、通常、心房細動の持続期間と左心房の大きさなどで判断する。心房細動が長期間(5~10年)持続していたり、左心房が極端に拡大していたりすると、異常電気信号が心房のいたるところから発生しやすく、根治できないことも多いためだ。

 一方、発作性の心房細動の場合は、カテーテルアブレーションをおこなえば、80%の人が5年後まで再発しないとされる。

 カテーテルアブレーションには2種類の機器がある。カテーテルの先端から流れる高周波の電気により、肺静脈の入り口部を点状に囲んで焼灼する高周波アブレーションと、バルーン(風船)を肺静脈の入り口部に圧着させて一気に焼灼(または冷凍)するバルーンアブレーションがある。

■バルーンは8割が冷凍、簡便で安全性が高い

 バルーンアブレーションは、高周波アブレーションに比べると手技が簡便で安全性が高いが、基本的には肺静脈の入り口部に対してしかおこなえない。高周波アブレーションは、肺静脈以外の部位から異常な電気信号が出ても同時に治療することが可能であり、複数箇所の治療が必要な心房細動に適している。

 現在使用可能なバルーンにはクライオ(冷凍)、ホット(温熱)、レーザー(超音波)の3種類があり、クライオが8割程度と最も普及している。チャートの患者の場合、受診した病院の得意とするクライオバルーンによる治療を選択した。

 心房細動では脳梗塞の予防が重要だ。日本医科大学病院の清水渉医師はこう話す。

「高血圧症や糖尿病があるか、年齢は75歳以上か、脳梗塞を起こした経験があるかなどの指標により、脳梗塞の発症リスクを調べ、薬物治療(抗凝固療法)で予防をおこないます。アブレーションで心房細動の根治が望めますが、脳梗塞リスクの高い人には、アブレーション後も継続して抗凝固療法が必要です」

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