これまでの『R-1』では、演出や審査方法などに関して『M-1』との差別化を意識しすぎているようなところがあった。大成功している『M-1』とは別のやり方で何とか面白い大会を作れないだろうか、という試行錯誤の過程が見えた。

 だが、今年の『R-1』では、いい意味でそのこだわりをなくして、演出やシステムを『M-1』に近づけてきた。成功例から無理に離れようとするのではなく成功例を素直に真似るというのは、成功への近道である。2002年に始まった『R-1』が、一周回ってようやく「王道」に戻ってきた感じがする。

 そんな今年の『R-1』で決勝に進んだのは、ZAZY、土屋、森本サイダー、吉住、寺田寛明、かが屋 賀屋、kento fukaya、高田ぽる子、ゆりやんレトリィバァの9名。ここに当日行われる敗者復活ステージの勝者1名を加えた10名が決勝で争うことになる。

『女芸人No.1決定戦 THE W』のチャンピオンであるゆりやんレトリィバァ、吉住をはじめとして、誰が優勝してもおかしくないメンバーが揃った。

 芸歴10年以内の芸人というのは、定義上は「第7世代」と呼ばれるところに当てはまる。だが、近年盛り上がっていた第7世代ブームもようやく落ち着いてきた感があり、第七世代が出ているからといって無条件で盛り上がるわけではない。

 むしろ、この「ポスト第7世代ブーム」の時代には、真の実力者だけが評価されることになるだろう。そういう芸人を発掘するのがこの手のコンテストの重要な意義である。

 新生『R-1』で王座に輝くのは誰なのか。『R-1グランプリ2021』は、3月7日の夜7時から関西テレビ・フジテレビ系全国ネットで放送される。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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