そもそも、首相官邸の記者クラブ「内閣記者会」幹事社は、26日中に首相の記者会見を開催するよう申し入れていたが、官邸側は応じなかったという経緯がある。

 法政大学の上西充子教授は「もっと要求を強めるべきだ」と主張する。

「首相会見は内閣記者会が主催者なのだから、『我々が司会進行をやりますから開いてください』と要求するのは当然です。その要求した経緯をニュースにして、世の中に知らせるべきです。各社が社説や論説で『これはおかしい』と表明してほしい。そうでないと、記者会と政権側が、お互いになれ合っているように思われてしまいます」

 上西教授は、司会である山田氏が指名するメディアの“偏り”も指摘する。

 昨年9月の首相就任時から2月2日までに国内で開かれた首相会見を各社の質問回数別にみると、東京新聞が0回、朝日新聞が1回、西日本新聞が0回(幹事社質問を除く)であるのに対し、産経新聞が4回指名されている。

 これは、山田氏が菅首相に厳しい質問をしそうなメディアを避けている結果ではないか、と上西教授はみる。

「おそらく各社に事前に質問取りをした中で、これなら(菅首相が)答えられそうだという質問をする記者しか当てないのでしょう。東京新聞や朝日新聞、西日本新聞のような、政権を批判的に報じる社は当てないという傾向があります。核心を突くような質問をする社を当てることには、及び腰なのでしょう。そもそも、質問の采配を政権側に明け渡している現状にも問題があります」

 前出の角谷氏も、山田氏の司会進行に対してこう指摘する。

「偏った進行に対しては、(山田氏が)内閣広報官の任に就く資質があるのかを、内閣記者会が(官邸側に)しっかりと問うべきです。内閣広報官とうまくやることで、記者側もメリットを感じていたのではないでしょうか。国民ファーストからズレている山田氏を、官邸も記者クラブ側もたしなめられないのだとすれば、問題の根源は山田氏というよりも、会見に臨む人たち全体の意識にあるのではないでしょうか」

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「今後の進行役は内閣記者会がするべきだ」