国境なき医師団の活動は、その年の12月まで続けられ、延べ41人のスタッフが従事。医療サポート活動のほか、ストレス障害に対応する心理ケアカウンセリング、診療所の建設・医療機器の提供などを行った。

■知識・技術のほかに 医師に大切なもの
 
 あれから10年――。国境なき医師団はその後も地震(2016年)、西日本豪雨(18年)での支援を行った。

「東日本大震災後、薬剤師や心理ケアの緊急災害グループもできたほか、災害対応のシステムも進化し、初期対応は格段にスムーズになりました。また、避難所も女性や子どもなど弱い立場の人たちへの配慮が進み、プライベートスペースが設置されるなど、変わってきています」
 
 黒崎医師は、医師を目指す若者たちに次のようなエールを送る。

「このような被災時や紛争地域など、医療システムが整っていないケースで大切になるのは、患者さんの表情をしっかりみて、ここに至るまでの背景も加味して診察することです。医療の知識や技術だけではなく、多くの経験を積み、人間力を養ってもらいたいですね」

(文=AERAムック編集部・原子弾)