そして、この映画を見てもう一つ思ったこと。イジメについて。僕の通っていた中学の僕のクラスではイジメがありました。同じクラスのA君がいじめをうけていた。僕は学級委員長で、イジメがあるのをわかっていたけど、見て見ぬふりをしてしまった。

 ある時、隣の教室の身長180センチもある怖い男性教諭にすべてがバレて、男子全員職員室に呼ばれて、怒られてしばかれました。

 A君にやったいじめと同じことを先生にされました。ラリアットをやったやつは、ラリアットをされました。自分がやった罪の重さを身を持って教え込まれました。

 僕は最初に先生に呼ばれ、先生に言いました「僕はいじめてません」と。先生は僕に言いました「見て見ぬふりするのが一番の罪なんだよ」と。そして顔を殴られました。

 学級委員だからこそとめなきゃいけなかっただけど、止めた瞬間、今度はいじめの標的が自分に回ってきそうな気がして怖かったんです。そして僕は見て見ぬふりをした。

 大人になってからもあらゆる場所で、この「見て見ぬフリ」をしてしまった経験のある人、いると思います。西川監督の作品は、毎回、自分の胸の奥にしまってある部分を引きずり出される気持ちになる。皆さんもこの映画を見て、その隠してる自分と向き合うのもいいかもしれません。

 傑作です。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。主演:今田耕司×作・演出:鈴木おさむのタッグで送る舞台シリーズ第7弾『てれびのおばけ』が4月14日(水)~4月18日(日) 下北沢・本多劇場で上演。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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