内視鏡治療後、切除された病変部の病理診断がおこなわれる。内視鏡などによる術前診断はいわば仮診断であり、これで正確な診断がつく。その結果の見方を原田医師が解説する。

「がんの深さなどの四つのチェック項目のうち複数に該当すると、リンパ節転移や再発を起こすリスクが明らかに高いことがわかっています。このような患者さんには、病変があった周辺を切除するための外科手術を検討することになります」

 ただし、外科手術にはリスクも伴う。例えば病変が下部直腸なら、手術で排便機能が低下したり、人工肛門の造設になったりする可能性もある。再発リスクを優先して手術するか、生活の質を優先して手術を回避し、経過観察とするかの選択である。真下医師が説明する。

「日本の外科手術は安全性が高く、ただ高齢、持病があるというだけで、追加外科手術が回避されることは少ないです。しかし、下部直腸の場合や、手術により、さらなる認知機能の悪化が危惧される場合は経過観察が選択されるケースもあります」

■外科との連携も重要、外科の手術数も確認を

 病院選びは、「治療成績などを自院のデータを用いて話してくれるか、あるいはホームページで公表しているかが、信頼できる病院かどうかの目安」というのが原田医師の見方である。

 真下医師は「内視鏡治療は、手術を担当する外科との連携が欠かせません」と話し、「大腸がん手術」の症例数も併せて確認、どちらも数多く実施していることを、がん治療の信頼を得ている病院の目安としている。

 ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【医師との会話に役立つキーワード】

《一括切除》
病変部を取り残しなくひとかたまりで切除するのが一括切除。この病変部の検査から、がんが周辺に広がり再発のリスクがあることが判明する場合もある。似た言葉の根治切除は、その広がったがんも含めて、外科手術と同等に切除すること。

《深達度》
がんがどれくらいの深さまで達しているかの目安。Tis~T4bの6段階に分類されている。腸壁の表面をおおう粘膜にとどまっていればTis、その下の粘膜下層までならT1。以上が早期がんで内視鏡治療の対象となる。T4bは他臓器まで達した状態。

【取材した医師】
手稲渓仁会病院 消化器内科部長 内視鏡室室長 原田 拓医師
埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科 准教授・診療副部長 真下由美医師

(文/近藤昭彦)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より