■追加手術の選択はリスクを理解し選択しよう

 ESD治療後は病理診断でがんが取りきれているかどうか、転移リスクを確認する。ESDで完全切除され、がんが取りきれていた場合、経過観察となる。ただし、残った胃に新たながんが発生するリスクもあるため、定期的な内視鏡検査をおこなう。

「治療後に見つかった2個目のがんのほうが深かった例もあります。必ず年1、2回は検査を受けましょう」(松田医師)

 ESDの病理結果で転移のリスクがあることが判明した場合は、外科で追加手術となる。経験豊富な病理医により、適切に病理診断がされていることが前提だ。年間100例以上のESD治療をこなす病院ではまず診断に問題はないという。

 ただし、80代以降では、からだの状態によってはガイドライン通りに手術しないケースも多い。矢野医師はESD治療後の選択が一番難しいと話す。

「リンパ節転移のリスクがあって追加手術が必要な場合も、併存疾患があって手術によるからだの負担が大きいと思われる高齢者ではよく話し合って検討します。とくに胃全摘の場合は体重が15%ほど減少し余命にも影響を及ぼします。とはいえ、転移が出てからでは救命が難しい。リスクを患者さん自身やご家族がよく理解し、納得して選択してほしいですね」(矢野医師)

 ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【医師との会話に役立つキーワード】

《深達度》
がんの深さの程度。これによって、胃がんの進行度が決まる。がんが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期胃がん」、粘膜下層より深いものを「進行胃がん」という。

《分化型がん、未分化型がん》
細胞の特徴による分類。一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が早い傾向。未分化型は胃壁内に染み込むようにがんが広がる特徴もあり、悪性度が高い。

【取材した医師】
富山県立中央病院 消化器内科部長 松田 充医師
国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科科長、内視鏡センター センター長 矢野友規医師

(文/石川美香子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より