がんのタイプが分化型の粘膜内がんであれば、大半の場合は内視鏡治療が可能だ。

 ただし、がんの深さが粘膜下層に及び、リンパ節転移の可能性が判明した場合や、潰瘍を伴った3センチ以上のがんでは手術となる。富山県立中央病院の松田充医師はこう話す。

「胃潰瘍が治った傷跡である潰瘍瘢痕にかかるがんや治療後の遺残再発などは病変が硬くなっています。粘膜内にとどまる3センチのがんでも技術的に内視鏡治療が困難な場合もあります」

■転移リスクあれば70歳以下では迷わず手術

 内視鏡治療には「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」がある。2センチ以上のがんでは、ESD治療が主体だ。現在はがんを完全切除して根治が望めるESDが内視鏡治療の主流だが、大きさを問わずESDのみおこなう病院も多い。2018年に変更されたガイドラインでESDの適応が広がり、より多くの早期がんが治療可能になった。

「ただし、ESDは術者によって技量の差が出やすい。難症例でESDを希望する場合は、ESD治療数で年間100例以上をこなす、技術の高い病院を探すといいでしょう」(松田医師)

 国立がん研究センター東病院の矢野友規医師は内視鏡治療か手術かで判断に迷うケースについてこう話す。

「難症例であれば、ESD後に外科で追加手術する可能性も考慮し、ESD治療数と外科手術数が同程度に多く、どちらの技術も高い病院を選ぶべきです。内視鏡医と外科医の間で治療方針の議論や連携ができている病院なら安心です」(矢野医師)

 最終的に手術が適切と判断されれば、70歳以下では迷わず手術をして根治を目指す。寝たきりでない元気な80代も同様だ。しかし、全身麻酔のリスクや併存疾患のある患者は慎重に検討される。腹腔鏡手術であれば手術可能な場合も多いという。

「高齢者の分化型の早期胃がんでは、進行が比較的緩やかなため、半年ごとに内視鏡で観察しながら治療方針を話し合うケースもあります」(松田医師)

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