週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「胃がん内視鏡治療」の解説を紹介する。

【図解】胃がん治療の選択の流れはこちら

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 胃がんは胃の粘膜層から発生し、がんが粘膜層もしくは粘膜下層にとどまっていれば「早期胃がん」、固有筋層より深く広がっていると「進行胃がん」と分類される。こうしたがんの深さに加え、リンパ節や他臓器への転移の有無などにより胃がんのステージは決まる。

 内視鏡治療はがんが胃の粘膜層にとどまっており、転移する可能性のない早期胃がんにおいて有効だ。おなかを切らずに治療できるため、手術と比べるとからだに対する負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため、食生活に対する影響が少ない。

 胃がんの内視鏡治療は主に、輪状のワイヤーをかけてがんを切り取る「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と高周波のナイフで切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の二つがある。ESDは大きな病変でも一括切除が可能で再発が少ないため、現在、内視鏡治療の主流になっている。

 ただし、ESDは高度で特殊な手技であるため、かつては専門病院でしか実施されなかった。技術の向上と内視鏡機器の進化により、治療時間の短縮や安全性も向上し、現在は一般病院でもESDが可能になっている。2018年に変更されたガイドラインでは、ESDの絶対適応病変の基準も広がり、より多くの早期がんが内視鏡治療で取り除けるようになっている。

 胃がんで内視鏡治療を受ける場合は、がんが粘膜内にとどまりリンパ節転移を認めない早期胃がんであることが前提だ。早期胃がんの治療方針は、(1)がんのタイプ(分化型・未分化型)(2)がんの大きさ(3)がんの深達度(深さ)(4)潰瘍所見から総合的に決まる。治療前の診断的内視鏡検査でこれらが確認され、内視鏡治療が可能か判断される。

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