がんが固有筋層に達している進行胃がんの標準治療は手術だ。従来は開腹手術でおこなうことが多かったが、近年は腹腔鏡手術が増加。また、ロボットを用いて手術をおこなう病院もある。腹腔鏡が増えている理由について、順天堂大学順天堂医院の福永哲医師はこう話す。

「腹腔鏡はおなかに小さい穴を開けて専用の器具で手術をおこなうため、開腹手術よりもからだへの負担が少ない手術です。胃がんは70歳以上の高齢者に多いため、腹腔鏡はメリットが大きい。90代でも寝たきりでなければ、手術可能です。ただし、病院によって治療方針が異なり、技術の差があります」

 進行がんの標準治療は開腹手術だが、腹腔鏡手術も同等の治療結果が得られると評価されつつある。高い技術をもつ病院では適応を拡大させて腹腔鏡を多く実施している場合もある。大阪国際がんセンターの大森健医師はこう話す。

「腹腔鏡手術は、おなかの中でおこなう手術の内容は開腹手術と同じですが、傷が小さく済み、術後の回復も早い。ただし、腹腔鏡手術の技術をもつ医師がいない病院などでは従来通り、進行がんには開腹手術をおこなうことも多いです」

 腹腔鏡の技術を持つ医師がいるかどうかは、技術認定医の資格の有無で確認できる。

 2018年から保険適用となったロボット手術は、実施可能な病院はまだ限られるが、より繊細な動きが可能なため胃の再建時など縫合の多い手術において選択される。

 チャートのようなケースでは、近年の動向では腹腔鏡手術が選択されることも大いに想定される。

■できるだけ胃全摘を避け機能温存する傾向に

 手術方法が決まったら、次は胃切除範囲の選択だ。切除範囲を考えるとき、いちばん考慮すべきなのが胃を残せるかどうかだ。切除する胃の範囲は、がんのある部位とステージから決まる。胃の真ん中あたりにできた3センチ程度のがんの場合、胃の出口である幽門を含んだ下部の約3分の2を切除する幽門側胃切除術、または胃全摘術のどちらかを選択することが多い。

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