※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「肺がん手術」の解説を紹介する。

【図解】肺がん治療の選択の流れはこちら

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 がんのなかでも死亡者数が多い肺がん。「非小細胞がん」と「小細胞がん」の2つに分けられる。「非小細胞がん」のほうが発生頻度が高く、そのなかで最も多いのが腺がんだ。近年はCT検査の発達ですりガラス状の小さい線がんでも見つかりやすく、小さい範囲でがんを切り取る区域切除や部分切除が増加している。

「小細胞がん」は増殖速度が速く、転移や再発をしやすいという特徴を持つ。手術のみでは治療が難しく、抗がん剤と放射線療法などの組み合わせでがんを治療する。

「非小細胞がん」で手術適応になるのはステージI~II期とIII期の一部に限られる。それ以外は抗がん剤などの薬物療法や放射線治療がメインだ。健康寿命が延びているため、手術適応の年齢は拡大している。ガイドラインでも、肺がん手術の適応は患者自身の体力や肺の状態で決まるものであり、年齢で区切ってはいけないという内容が記載されている。現在手術を受けている患者の平均年齢は72~3歳で、10年前から10歳アップしているという。

 肺がん手術では、はじめに手術で安全にがんを取りきることができるのかが考えられる。そのうえで、肺をどれくらい残せるのかが検討される。産業医科大学病院の田中文啓医師は、「目指すべきは肺葉切除」だと話す。

 「肺は右に上・中・下三つ、左に上・下二つの肺葉がある。呼吸には通常二つの肺葉しか使っていないため、三つの肺葉をとることができます。つまり、片方の肺は全摘できるのです。しかし、三つの肺葉をとってしまうとからだを少し動かしただけで息が上がるなど、QOL(生活の質)が大幅に下がります。肺葉切除は、がんをきちんと取り除くことと、正常な肺をできる限り残すということのバランスが最もとれた手術方法です」(田中医師)

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