※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
閉塞性動脈硬化症データ※週刊朝日2021年2月26日号より
閉塞性動脈硬化症データ※週刊朝日2021年2月26日号より

 私たちのからだには常に血液が巡り、全身に栄養を届けている。しかし、血液の通り道である血管が動脈硬化によって細くなったり、詰まったりすると、血液が十分に全身へ行きわたらなくなる。脚の血管の血行が悪くなり、痛みや壊疽(えそ)を引き起こすのが、閉塞性動脈硬化症(ASO)だ。

【データ】注意すべき予兆は?男女どちらに多い?知っておきたい病気の基本データ

*  *  *

 動脈硬化による血行障害は、心臓なら心筋梗塞や狭心症、脳なら脳梗塞という具合に、部位ごとに病名がついている。ASO(閉塞性動脈硬化症)は、主に脚に起きる動脈硬化性疾患のことを指す。同義語として、PAD(末梢動脈疾患)とも呼ばれる。

 ASOは、進行すると足先から壊疽を引き起こし、最悪の場合は下肢切断にまで至る。間欠性跛行(しばらく歩くと脚が痛み、少し休むと回復する症状)などの、ASOの兆候が見られる人は、放置せず病院で治療を受けたほうがよいだろう。

 ASOの初期治療は、よっぽど重症でない限り、まずは運動療法や薬物療法などの保存的治療(手術以外の治療法)が選択される。

 東京医科大学病院循環器内科教授の冨山博史医師はこう話す。

「運動療法では、医師や理学療法士などの監視または指導の下で歩いてもらいます。間欠性跛行の患者さんは歩くと痛みが出てきますが、無理しない程度で負荷をかけることで、症状改善や進行予防になります。薬物療法では、傷んだ血管を直接良くする薬は存在しないので、高血圧などの血管に悪さをしている因子を改善する薬を処方します」

 保存的治療をおこなっても改善が見られない場合は、血行再建術が検討される。ただし、保存的治療を集中的におこなっていれば、重症の虚血や脚切断に至るケースは5%未満と少ない。血行再建術に進む前に、間欠性跛行などの症状によって受ける悪影響と治療によるリスクとを天秤にかけて慎重に判断することが重要だ。

■血管内治療が血行再建術の中心に

 血行再建術には、主に自身の静脈や人工血管を移植し、血管の迂回路を作るバイパス手術と、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、管の先端についているバルーン(風船)やステント(網状の金属管)で、内側から血管を押し広げる血管内治療がある。

 血管内治療では特に、ステントを血管内に置いてくることで、再び血管が狭くなるのを防ぐステント留置術が現在の主流となっている。

 ASOの血行再建術は、50年以上にわたってバイパス手術が主力であった。だが、ここ20年間の血管内治療の急速な進歩と普及により、現在では患者の状態に応じて術式を選択できるようになった。

 慶応義塾大学病院外科准教授の尾原秀明医師はこう話す。

次のページ
注目は、遺伝子治療薬