「藤浪は大舞台の経験豊富で、プロ向きの即戦力と思われた。出だしは順調だったが、徐々に壁にぶつかり始めた。逆に大谷は球団方針もあり『二刀流」としての英才教育を受け、18年からメジャーに挑戦。2人は真逆に近い道を歩み周囲の評価も逆転、藤浪はファンやマスコミからは掌返しで戦犯扱いされた。20代の若者には、かなりの負担になったはず。口数も少なくなり、野球への情熱を維持するのが難しいようにも見えた」(高校時代から見続ける記者)

「制球難が酷くなった時期、トレードの噂で持ちきりとなった。実際、数球団が水面下で動いていた。逆に言うと、きっかけさえあれば大化けできると高い評価をされていた。メジャー球団も本気で調査していたと聞く。昨年後半からの様子を見ていると、吹っ切れたようで何かを掴みつつある。年齢も若いし、まだまだ成長できる伸び代があり期待できる」(在京球団編成担当)

 藤浪の強みの1つに、大きな故障がないことが挙げられる。大谷はメジャー1年目の18年オフに右ひじのトミー・ジョン手術を受け、19年には左ひざを手術したこととは対照的に、身体の強さを持っている。技術部分を修正し、結果が伴うことで自信が回復すれば、不調の原因とも噂された『イップス』を乗り越えられるはずだ。

「『イップス』という定義自体、明確でなく、医学的にも分かってないわけやから。技術的、精神的など、原因を知ったかぶって語りたがる人が多い。阪神という人気チームだけに、そういった余計な声も耳に入りやすく、晋太郎も悩まされたはず。でも苦労しながらも乗り越えながら、少し光が見えて来た。そこはホンマ頭が下がる思い。元々、身体は健康そのものだから、ここから新たなプロ人生が始まると信じてる」(阪神球団関係者)

「そんな甘くはないだろうけど、こっちとしては行ってほしい。順調にというか、さらに、これからイニングだったり変化球だったり、ランナーを背負ってのピッチングとか、そんなのやり出したらナンボでもあんねんから。そんなに素直にとは行かないけど。まあ、でも楽しみ」(矢野監督/2月7日)

 紆余曲折の末、どん底状態からは抜け出した。誰もが望む05年以来のリーグ優勝、そして85年から遠ざかっている日本一に向けては大型右腕の活躍が必要不可欠だ。何かと暗い話題ばかりの世の中を、関西から明るくして欲しい。21年、藤浪晋太郎の“かっこいい姿”を、日本中に見せつける準備は整いつつある。