「要注意ですね。このままなら相当な戦力になるだろう。ワインドアップの投球フォームもばらつきがなく、安定感が格段に上がっている。これまではバランスが悪くなり制球を乱すことが多かった。精神的なものもあるだろうが、技術的な部分に問題があった。そこが改善されれば、もともとの能力は高い。先発で回せば2ケタも十分勝てる力は持っている」(在京球団編成担当)

「昨年は新しいスタイルを模索している感じがあった。投球フォームが安定すれば、変化球の精度もさらに上がる。長い腕から真っ直ぐとスライダーをしっかり投げ分けられたら、見極めるのは難しい。日本ハム時代のダルビッシュ有(パドレス)を思い出させる。初見での対応は難しいので、交流戦で投げられたら厄介」(パ・リーグ球団スコアラー)

 大阪桐蔭高の3年時に甲子園で春夏連覇を果たし、鳴り物入りで阪神入りした藤浪。高卒1年目の13年にいきなり10勝(6敗)を挙げ、15年まで3年連続で2ケタ勝利を記録するなど、プロとして順調なスタートを切った。しかし17年以降は制球難などに悩まされ、ファームで過ごす時間も長くなった。そして19年の一軍登板はわずか1試合に。また、昨年はシーズン前にコロナ禍の中での会食でウイルスに感染したことが判明し、グラウンド外での行動がクローズアップされてしまうこともあった。

「勝利に対して貪欲で、野球にひたむきに取り組んでいた。勝つためには自分が犠牲になれる選手だった。プロ1年目から結果を出して、少しだけ慢心も出始めたのかな。高校までは野球漬けだったので、反動もあったのかもしれない。その後自身も結果を出せなくなり、悩んでいたのだろう」(大阪桐蔭高時代のチームメイト)

 高校時代には大谷翔平(エンゼルス)とともにプロ注目の大型投手として知られていたが、ピッチャーとしては藤浪が上との評価もあった。しかし比較された大谷の活躍に合わせるように、自身の成績は低迷。マスコミのみでなく阪神ファンからも「藤浪は終わった」という声すら聞かれるようになり、まさに四面楚歌の中でもがき苦しんでいた。

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今年“かっこいい藤浪”は見られるのか?