「自分にもできることがある」

 この経験が、おーちゃんの前向きスイッチをバチコン!と押した。

 その後の視覚障害者訓練を、おーちゃんは高いモチベーションで前のめりにこなす。

 料理、掃除、裁縫、スティックを使っての歩行の仕方。外では車の音を聞いて、赤信号か青信号かを判断する。ガイド付きで、家の近所を歩行する練習もする。

 ただし、訓練しても、近所を一人で歩けるようになる人は1割なのだそうだ。

 おーちゃんは早々に一人で歩き回れるようになり、さらに、電車やバス、飛行機を乗り継いで知らない街を一人で旅できるようにまでなってしまう。

 あれから17年。おーちゃんの肩書は「旅カメラマン」。

 大変な思いをしたに違いないけれど、おーちゃんのことを、可哀想な人、なんて思わないでほしい。

◯47都道府県全ての県で民泊する一人旅
◯よさこいチームのメンバーとしてフランスで舞踏
◯福祉教育アドバイーザーとなり、全国で講演
◯ミュージックビデオ制作
◯ユーチューブデビュー
◯スキューバーダイビング
◯ドルフィンスイム
◯パラグライダー
◯ゲレンデスキー

 これら全て、全盲になったおーちゃんが達成したことである。

 おーちゃんにはネットで繋がる200人の仲間がいて、一緒に様々な活動をしている。ユーチューブだって週2~3回も更新している。

 完全に、私より人生を謳歌してるじゃねえか!

 そしてこの度、それらの経験をしながらおーちゃんが書きためていた文章、そして撮りためた写真をまとめたフォトエッセイを出版するための、クラウドファンディングを始めたのだ。

 1000冊の予約が入れば達成。

 おーちゃんの新たなチャレンジだ。

 光を失い、音と肌感覚、嗅覚で世界を新たに認識し直したおーちゃんが、いかにカラフルに世界を「見て」いるのか。どんな写真を撮っているのか。

 私も興味津々なのである。

■水野美紀(みずのみき)
俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報>テレビ朝日系ドラマ「にじいろカルテ」が1月21日(木)スタート。レギュラー番組は、フジテレビ系バラエティ「突然ですが占ってもいいですか?」毎週水曜22:00~、讀賣テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/

【書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』好評発売中】

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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