通信制高校は、その名のとおり通信教育による自宅学習がメーンで、通学日数が少ないのが最大の特徴です。学校になじめなかった不登校の子、芸能界やプロスポーツの世界を目指している子などが多く、進学先として通信制高校を選んでいます。ただ、すそ野は広がってきています。

■ 校風がゆるい 暗黙のルールもない

 通信制高校は学校ごとに校風も大きく異なりますが、おおまかに言えば3つの特徴があります。

 1つ目の特徴は「入学・転入学がしやすい」こと。一部の学校をのぞけば通信制高校の間口は広く、多くの場合は入学する意思があれば入学できます。入学・転入学に必要な条件としての学力もさほど問われません。入学時に学力試験、面談、作文などを行なう場合もありますが、目的はふるい落とすための「選考」というよりは、今後のケアがどれぐらい必要かを測ることです。通信制高校は途中からでも入りやすいため、卒業時までに生徒数が倍増するというケースも珍しくありません。

 2つ目の特徴は「通学スタイルが選べること」。多くの通信制高校では、週1回から週5回までの通学コースのなかから好きなコースを生徒が選択します。登校回数が減らせることは最大のメリットで、一番多いパターンは週2~3日程度の登校だそうです。

 3つ目の特徴は「校風がゆるい」こと。多くの通信制高校では学生服を着る、着ないは自分で選べます。「部活に入らなければいけない」などの暗黙のルールもありません。

■ 気になる学費、進路は?

 通信制高校の学費は、公立高校程度から私立高校程度までさまざまです。おおむね出席日数の頻度が上がれば学費も上がる傾向だと思っていいでしょう(集中スクーリング形式の学校はのぞく)。

 一方、卒業の進路状況はどうでしょうか。文科省の調査(※)よれば、通信制高校からの大学進学率は17.6%。これに対して全日・定時制高校からの大学等進学率は54.7%と開きが出ています。ただし就職率でみると通信制は18.9%、全日・定時制は17.7%と逆転しています。通信制だからと言って進路の選択肢が極端に狭まる、なんてことはないようです。

 なお、通信制高校を卒業するための「サポート校」という教育機関もあります。通信制高校は自宅学習がメーンになるぶん、自己管理能力が求められます。そこで卒業に向けて勉強や精神面をケアしてくれるサポート校に併せて通う生徒も多いのです。ただし、サポート校は法律上、学校ではなく塾の一種。サポート校に通う場合は、塾へ通いながら高校にも通うのと同じですから通信制高校の学費とは別に費用がかかってきます。

 通信制高校の人気は仕組みにあると私は思っています。多くの人が学校に対して「おかしい」と疑問視していた部分が改善された仕組みだからです。難しすぎる入試、朝早くからの登校、強制される学生服や通学など、おかしな点を通信制高校は改善した結果、生徒が集まったようです。ただし、生徒数の増加に対応できていない学校や、ずさんな運営をする学校もあるそうなので入学時には注意も必要です。

 最後に、進路に悩んでいる方や「もう変えられない」と進学先の変更を諦めている方がいれば、お伝えしたいことがあります。3月末まで入学を受けつけている通信制高校はたくさんあります。高校や進学先について悩む時間はまだあります。また「通信制大学」もあり、大学受験で苦しんだ人もぜひ進路の一つとして検討してもらえればと思います。

 というのも私自身は中学受験で失敗して、不登校になりました。受験で失敗するまでは「私立学校へ行かなければ人生は終わりだ」と思っていました。不登校になったときは「人生が詰んだ」とも思いました。でも、それはまちがいでした。学校だけで決まる人生なんてありません。私は高校へも行かず、中卒のまま働いて今に至っています。学校へ行くよりも休息する時間を優先しました。正しかったと思っています。

ぜひ、いまも進路に迷われている方がいれば、自分の気持ちに正直になって道を選んでほしいと思っています。かならず明るい道は残されているはずです。(文/石井志昂)

※学校基本調査(令和2年度)より

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。

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石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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