写真はイメージです(Getty Images)
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 近年、親世代にはなじみの薄かった「通信制高校」の役割が高まってきています。KADOKAWA・ドワンゴが創る「N高(N高等学校)」も話題になりました。いまや高校生の15人に1人が通信制高校に通っています。なぜニーズが集まっているのか。実際に通った子どもたちはどのように感じているのか。この時期、進路を迷っている方のために、「不登校新聞」編集長の石井志昂さんが解説します。

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 文部科学省の調査によれば、通信制高校へ通う生徒は生徒数、入学者数ともにこの5年間一貫して増加しています(※)。では、実際に通信制高校に通った子たちはどう感じたのでしょうか。まず、私が知るなかで印象的だった事例を2つ紹介します。

「高3の秋からでも通信制高校へ転校してよかった」

 このように語るのは、現在21歳の女性です。彼女は、高校2年生のとき、強い不安感や動悸などに襲われるパニック発作とうつ病を患い、不登校になりました。病気が発症した背景には、小学生時代に受けた「いじめ」と両親からの「登校圧力」があったそうです。なぜ高校生になってから小学生時代の記憶に苦しむことになったのか。何がきっかけだったのかは「自分でもよくわからない」と本人は語っています。いずれにしても、学校へ向かおうとすると不安感や恐怖心が芽生えてくるため、学校へ通うことはできなくなりました。

 それでも「高校は卒業したい」と思い、通信制高校へ転校します。地元の高校には知り合いの生徒がいたこと、毎日の登校には自信が持てなかったことなどを考えて通信制高校を選びました。転校をしてみると、週2回の登校ペースならばゆとりを持てたことや、教員が親身になって勉強につき合ってくれため安心できたそうです。

 しかし、通信制高校でも、彼女はいじめの標的にされたそうです。ある日、学校行事のことで同級生と揉めてしまうと、彼女のLINEには「死ね」「殺すぞ」という書き込みが複数人からありました。彼女が担任に相談すると、担任は「あなたは悪くない」と言って解決に乗り出しました。これが功を奏して、同級生とは和解し、いじめに関わった同級生からは謝罪を受けました。こうした教員や同級生らの真摯な対応に触れて、わずか半年程度の高校生活でしたが、振り返ってこう言います。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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