「入ってしまえば、大学までなんとか行けるだろう、とたかをくくったのが失敗でした。結果的に、中・高・大学と3回も受験をすることになってしまいましたが、息子はその都度ベストを尽くしました。当初の名門大学には入学できませんでしたが、今は就きたい職につながる学部のある大学に入学し、楽しんでいます」

 とCさんは息子の受験を振り返ります。

 反対に、中学受験で第一志望はおろか第二、第三志望にまで落ちて、「滑り止め校」しか受からなかったものの、進学した先での学校生活が充実していたおかげで、名門大学への切符を手に入れたご家庭もあります。7年前に中学受験を経験した、Rさんのお嬢さんS実さんのケースです。

「熱望していた第一志望校とは偏差値も雰囲気もまるで違い、ここに6年間も通わせていいのか、正直不安で仕方なかったんです」

 Rさんは、中学受験の結果が出た当時の心境を正直に話します。しかし、その「滑り止め校」に入学してみると、ほどなくS実さんは「学校がすごく楽しい!」と明るい表情で話すようになりました。S実さんは、部活も遊びも謳歌。成績も最初から上位をキープできていたため、勉強に自信を持つことができ、どんどん意欲的になっていきました。最終的に、S実さんは、中・高の学校生活を思う存分堪能したのち、学校の推薦制度を使って、名門大学への進学を勝ち取りました。

「行きたかった中学に落ちたときは本当に辛かったけれど、この学校に巡り会えたことをとても感謝しています」

 S実さんは笑顔で語ってくれました。

 受験のさなかは、親も子も「第一志望校に入れれば、バラ色の人生が待っている」と信じて、全力で駆けます。しかし、上記のケースが物語るように、中学受験は単なる人生の通過点なのです。

 受験では、「合格・不合格」という結果に一喜一憂しがちですが、それは人生の「成功・失敗」では決してないこと、人生はどのタイミングからもやり直しができるということを3つのご家庭から教えてもらった気がしています。(取材・文/スローマリッジ取材班 鶴島よしみ)