「結局、地方裁判所から妻に『DV保護命令』が下りました。しかし、実の妻にここまでしていいものかと、何とも言えない複雑な気持ちになったのを今でも覚えています」

 この時期と前後して、うつ病も相まって妻のストレスはオーバーフローしていく。義理の両親がサポートに来てくれたが、余計に家族は分裂へと向かっていった。

「ある時妻が『子どもを連れて実家でしばらく過ごしたい』と言ってきたんです。2週間くらいならと思いましたが、妻は『そんな短期間では意味がない』と言う。では、子どもは置いて、しばらく実家で静養すればと提案したら、『それは嫌だ』と。もめた末、結局、妻は実家に帰るのをやめました」

 実はこのころから尚之さんは、何かと実家に頼りたがる妻に不信感を抱いていた。知人の弁護士に家庭の状況を相談すると、弁護士は「奥さんに子どもを連れて出られたら終わりだよ、一生子どもに会えないよ」と忠告。「連れ去り」に注意するように言われたという。

「そのとき初めて『連れ去り』という言葉を知りました。妻を観察していると、確かに連れ去ろうとしている気配がある。実はラインも盗み見たのですが、実家の協力のもと、連れ去りを計画していました。『夫には一生子どもを会わせない!』などという言葉もありました」

 驚いた尚之さんは、別の弁護士のサポートを受けて、連れ去りが起きる前に家庭裁判所に監護者指定調停と審判前保全処分を申し立てた。

 そして、まさに連れ去りが決行されようとしたその日。義理の両親が妻の指示でわざわざ保育園に長男を迎えに行く計画が立てられていた。しかし、妻のラインなどから事前に情報をキャッチしていた尚之さんは、事前に保育園、警察と児童相談所に相談。直前で連れ去りを阻止した。結局、警察と児童相談所の判断で、監護者が決まるまでの間、子どもは児童養護施設に入所することになった。

 長男が児童養護施設に入所し、どちらの親元にもいないことが「子の福祉」に反すると判断した裁判所は、尚之さんが申し立てた監護者指定調停を受領。結果、尚之さんが長男の監護者として指定されたことで、現在に至っている。

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子どもを連れ去ろうした妻を信用できない