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「無意味な校則をなくしたいのに…」闘う38歳女性教師に鴻上尚史が示した日本教育の「思考するなという訓練」
鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋
2021/02/16 16:00
「校則だから従え」というのは、本当に「思考するな。自立するな」という訓練を受けていることと同じです。
麹町中学の工藤校長が著書の中で書かれていましたが、学校の改革は、かなりのところ、校長の決意ひとつでできるようです。大変な努力を必要とし、激しい重圧に直面しますが、やってやれないことはないのです。
それが証拠に、校長が代わると、自由な校風で知られた公立中学校が、他の中学と同じような厳しい校則に戻る場合があります。最近、僕は、希望のひとつだと思っていた中学校がそうなりかけているという知らせを聞いて、とても哀しい気持ちになりました。新任の校長が、改革の継続を拒否したのです。校長は、そういう判断ができるのです。
麹町中学の工藤校長は、2020年3月に転任されましたが、後任の校長先生が、工藤さんの方針をそのまま受け継いでくれました。
僕が司会しているNHK BS1『COOL JAPAN』で取材させてもらったのですが、「服装・髪形に関する校則はない」状態で、生徒達が「スマホの使用ルール」について熱く議論していました。
「授業中に使用してはいけない」と生徒達で決めたのですが、そうすると「給食時間はどうなんだ?」という質問が生徒から出たのです。先生は、ただ見守るだけです。
生徒は、相談の結果、「スマホ使用の細かい規定」を決めることにしました。
取材VTRを見ながら、まるで、日本ではないと思いました。
生徒達は、自分達が決めたことがそのまま学校のルールになると分かっているので真剣です。多くの学校で見られる「結論は決まっていて、形だけ生徒に議論させる」という状態ではありません。また、学校側に近い意見を言った場合は先生はニコニコして、学校側に反発した場合は先生達はしかめっつらになる、という暗黙の発言コントロールもありません。
これが日本の公立の中学校で行われていることが、奇跡だと思いました。
ナナさん。ナナさんと僕の哀しみが深いのは、議論が成立してないからです。
理論的意見として、「ツーブロックは禁止。ツーブロックになると不良にからまれる」と思っている人とは、議論できます。「ホテル業界では、ツーブロックは清潔さの象徴になっている」とか「街でモニターした結果、100人中これだけの人がツーブロックだった。これだけいるのだから、ツーブロックはからまれる理由にならない」と、エビデンスを交えながら、どちらが適切か議論できます。ちゃんと議論できれば、変わる可能性はあります。
鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
鴻上 尚史


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