それでも、カスタマイズの際に入れておきたいものを三つ紹介します。まずは身体にまつわる“わたし専用のアイテム”。自身の身体の状況に応じて必要なもので、他人のものを借りたり譲ってもらったりしてでは代用がきかないものです。

 例えば、目が悪い人ならば眼鏡。今はコンタクトで一日過ごす方も多いですが、災害時は清潔を保てない可能性もあります。目の悪い方は眼鏡を準備しておくほうが安全です。歯の悪い方は、入れ歯でしょう。お手入れグッズとともにしっかり準備しておきましょう。耳の悪い方なら補聴器、足の悪い方なら杖、気管支の悪い方なら吸入器、いつも飲んでいる薬など、専用のアイテムとはすなわちそれがないと生活ができないアイテムです。避難先でないことに気が付いても取り返しがつきません。必ず入れておくようにしてくださいね。

 二つ目は、どうしても我慢できないもの、“トイレ”です。自宅から避難しないといけないような大災害では、避難先であってもトイレが使えるとは限りません。下水道に破損があれば水を流すことはでず、トイレが破損することもないともいえません。たとえ飲食を我慢できたとしても、トイレは我慢できません。小だけでなく、大もできるように準備をしておきましょう。携帯トイレは100均でも販売していますが、小専用で容量も少なめ。大もできるものは、ホームセンターやネット通販で入手可能です。トイレとトイレットペーパー、手洗い用のウェットティッシュも忘れずに入れておきましょう。

 そして三つ目は、“家族の連絡先と連絡方法”のメモです。普段からLINEグループなどを使っていればいざという時にも活用できますし、災害用伝言板の使い方を知っておけば、携帯電話がつながりにくい時にも連絡が取れます。ただ、その連絡方法や使い方を忘れないように、印刷して入れておけば安心です。

 また、家族の携帯の電話番号は覚えていますか? バッテリーが切れたらわからないなんてことにならないように、家族の連絡先は紙に控えておきましょう。電気が通じるまで時間がかかることもあります。小銭も用意しておけば、公衆電話から連絡することもできますね。

 最後に、非常持ち出し袋はいつでも使えるように用意して、いつでも持ち出せる所に置いておく。入れるものは必ず試して、「これなら大丈夫」というものを選んでください。定期的に点検する日を決めておきましょう。非常持ち出し袋を使うのは大災害に直面した“わたし”です。その時のわたしの助けになるように、今のわたしができることをやっておきましょう。(文/防災備蓄収納マスタープランナー・防災士 堀中里香)

※災害伝言板(Web171)
災害用伝言ダイヤル(171)及び携帯電話各社の伝言板と連携、相互に確認ができます。
https://www.web171.jp/web171app/topRedirect.do

※公衆電話の特徴と使用方法(総務省) 
停電や無料化措置時など、普段と使い方が異なる場合があります。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000162017.pdf

堀中里香(ほりなか りか)/1972年、東京都生まれ、栃木県在住。元ソニーのソフトウェアエンジニアとしてAIBO・QRIOの研究開発、UIデザイナ―としてXperiaの開発に携わる。退職後に整理収納アドバイザーと出会い、整理収納の考え方がUIデザインの考え方と似ているという気づきから興味を持ち、2014年に整理収納アドバイザーの資格を取得する。一方、2011年3月の東日本大震災では都内で被災。ボランティア等で東北を訪れるうちに防災備蓄を整理収納と合わせて伝えたいという思いが高まり、2017年4月に防災備蓄収納マスタープランナー、2019年12月に防災士を取得。現在、「あなたのいえのかたづけこびと、そだてませんか」をモットーに、日常は整理収納で、非常時は防災備蓄で、安全で安心な暮らしをサポートする。防災を考慮した整理収納サポートや、オンラインでの整理収納×防災備蓄セミナーが好評。整理を習慣づける週一オンライン部活動『みんなでおかたづけクラブ』も行っている。NHKひるまえほっと出演。ブログ『かたづけこびとのみつけかた』https://ameblo.jp/karikanariho/