「これは僕の想像なんですが、村山先生はご自身の時間が限られていることをご存じでしたから、将棋や勝負にかける姿勢は非常に厳しいものがありました。無駄な時間を過ごしたくない。やる気のない人に構っている時間はない。極端に言えばやる気のない奴は近寄るな、やめてしまえ。師匠もそういう姿勢に惹かれていたと思います」

 山崎も村山の世界観に影響を受けているのか。訊ねると山崎は考え込んだ。

「師匠の内弟子をしていたので、村山先生から影響を受けた師匠の部分をより濃く、影響を受けているかもしれません」

 影響を受けていると思うのは、たとえばこういうところだ。山崎は若い奨励会会員に対して「最近よく頑張っているね」という類の軽い社交辞令のような、励ましが言えない。

「そういう優しい言葉って、嘘っぱちなんですよ。本当にある程度強くなったりした人には言いますけれど、そうでない人にそういうのは甘やかしてているだけ。僕は同じ世界にいるときはなるべく使わないようにしています」

 と言いつつ、

「もっとも最近はおべんちゃらも覚えなきゃと思うので、どうでもいい人に使うこともありますけれど」

 というのも怖い。