岡崎の言うように、日本人選手は能力が平均して高い。だが、際立った武器や特性を持たない選手が多いのも事実だ。特に前線の選手は、ドリブルやスピード、決定力、高さ、強さなど、どれかひとつ強力な特色がないと、インパクトを放つのはなかなか難しい。

 岡崎の場合は、「ハードワーク」と「前線からの守備」を自身のアピールポイントにすることで、レギュラーの座を確保。その上で、貪欲にゴールを目指すスタイルをレスターで確立した。「個の力」がモノをいうプレミアで、献身的な動きでチームを支えないことには、まず試合に出場できないと考えたからだ。

 少し乱暴な言い方をすれば、味方と良い距離感を保ちながらチーム全体で連携・連動し、その中で自分の持ち味を出していくのが日本人選手のスタイルだろう。日本代表が世界と戦う際もここが武器になるが、個々の選手がプレミアで戦うには、自分の持っている「個の力」を全面に押し出す必要がある。

 反対に、ここができないと、チームメートや指揮官の信頼を掴むのは難しい。出場機会は増えず、結果もついてこない。

【2】プレミアリーグの資金力

 巨額のテレビ放映権により、各クラブが莫大な選手補強費を有しているのも、日本人選手にとっては大きな障壁である。下位クラブや昇格クラブであっても積極的な選手補強が可能で、それゆえチームが求めるのは即戦力となる。結果を出さなければ、すぐに代わりの選手がやってくるのもプレミアの大きな特徴だろう。

 実際、プレミアリーグの選手補強費は、他国と比べて群を抜いている。コロナ禍前の18年夏の市場では、リーグ全体で約1790億円の補強費を投下。イタリア・セリエAの約1280億円、スペイン・リーガの約980億円に比べても、プレミアの資金力は突出している。

 在籍8季で日本人最多のプレミア154試合に出場した吉田は、レギュラーの座を掴んだ後でさえ、「毎年、毎年がサバイバル。まったく気が抜けない」と、安泰の時期などなかったとこぼしていた。岡崎も「新シーズンになれば、新しい選手がバーッと入ってくる。そういう意味では、またイチからのスタート。毎年、イチになる」と、常に危機感を抱きながらプレーしていると話していた。

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正念場を迎えた南野