一方、「ひな壇にはもう出ない」と公言し、芸人も廃業しているものの、いざテレビに出ると結果を出すところも素晴らしいという。放送作家はこう語る。
「今回のプロモーションでいろんな番組で彼を見かけましたが、やはりどれも面白い。芸人的スキルがそもそも高いため、なんでもできる。『捕まってないだけの詐欺師』とか『おい革命家』とか先輩芸人からイジられながらも、ちゃんと笑いを獲り、プロモーションもやる。こんなに有能な宣伝マンはおそらくいないでしょう。また、芸人廃業宣言をした後も、『アメトーーク!』や『ゴッドタン』など、昔から世話になっているスタッフや先輩からのオファーにはしっかり答えるところも彼らしい。西野さんが絵を描き始めた当初、博多華丸大吉の大吉さんが西野さんの原画を『西野の絵が30万円で買えるタイミングは今後ないから、いま買う』と本当に30万円で買ったそうなんです。当時は西野さんの絵もそこまで評価されてなかった時期だったため、西野さんは大吉さんに恩義を感じ、大吉さんの番組には出続けているという逸話もあるほどです」
吉本興業の中でクラウドファンディングという仕組みを浸透させ「プペル」関連ですでに3億円近くを集めたと番組で明かしていた西野。やはり彼はシステムを作る天才なのかもしれない。若くして芸人として世に出るため、さまざまな芸能界の慣習を壊しては再構築してきたが、今後もいろんなものをぶっ壊していくのかもしれない。
TVウォッチャーの中村裕一氏は、退社後の西野の今後をこのように分析する。
「今日の彼の成功は、先行者利益によるところが非常に大きい。クラウドファンディングしかり、オンラインサロンしかり、誰よりも先にそれまで他の人が見向きもしなかった道に勇気を持って進んだことが、今の揺るぎないポジションにつながっています。芸人として、そしてビジネスマンとしての“嗅覚”は目を見張るものがあります。もっとも、真価が問われるのはこれから。確かに人とお金を集めるシステムは確立しましたが、大事なのはその中身。既成概念を破壊するのはいいですが、その本質を理解せず、彼に続く後輩や信者たちが形だけ真似をした“ニセ西野”を生み出す結果になっては、彼にとってもマイナスです。吉本を退社した今、道を切り開いた者としての責任と自覚を持って、次に続く世代の手本となるような生き方をぜひ示してほしいですね」
さまざまな人を巻き込み、笑いとエンタメを届け続ける西野。芸人を廃業しても、彼が芸人であることは間違いない。(藤原三星)