映画では表現の方法が異なるが、漫画原作では、冷川がミカドの力を借りるためのシーンが、繰り返し、頻繁に、詳細に描写されており、これらの場面は、この原作の大きな特徴のひとつである。



<なに 今の なんか めちゃくちゃ 気持ちよかった>(三角康介/1巻・第1話)

 冷川はミカドの力を借りる際に、ミカドに身体の部分(おもに指、手)を入れてしまう。実際には、肉体そのものではなく、「魂の一部」を挿入するわけであるが、入れられる側のミカドの体感からすると、はっきりと「侵入されている」肉体的感覚を受けてしまう。

<…おい 変な触り方すんな か らだの中に 指が入っ…動けない>(三角康介/1巻・第1話)  

 ミカドは冷川の「侵入」に対して肉体的な“快感”を得ていることがわかる。

■「除霊」にまつわる肉体的快感とは?

<これは 運命の 出会いですよ きみの力 だってこんなにはっきり見えます>(冷川理人/1巻・第1話)

 冷川ほどの霊能力者であっても、霊体の姿を正確にはっきりと目視することは難しいらしい。ミカドのように冷川の力を補ってくれる存在はなかなかいないという。

 冷川の除霊を手伝うということは、つまり、ミカドは「はらう必要があるほど恐ろしい死霊」と相対しなくてはならなくなることを意味する。ミカド自身は霊が怖くて仕方がないのだから、当然、除霊の助手を断ろうとするのだが、冷川が言った「三角くん きみ 私といれば怖くなくなりますよ」という言葉が気になり、周囲からの依頼も重なったことから、冷川と行動を共にするようになる。

<でも気持ちいいはず 私はすごくいい>(冷川理人/1巻・第1話)  

 冷川がミカドの身体に「侵入」した時、ミカドは性行為と似た「気絶するほど気持ちいい」感覚を味わう。これらの、冷川とミカドの「魂の接触」のシーンでは、快感を得ていることを、表情や態度の上で隠せないミカドに対して、冷川自身はほぼ表情を変えることはない。しかし、仕事のためという理由を超えて、冷川は積極的に、ミカドの「魂の本質」に触れる行為を求め、自分もミカドと同じような快感を得ていると言う。

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ミカドにリアリティーを与える志尊淳の演技力