しかし、契約後は低調な投球が続き、2018年には1勝14敗、防御率6.09という不名誉な成績を残し、オフに放出される結果となった。

 逆にFAになるタイミングが悪かったのが、ティム・リンスカム投手だ。リンスカムは2006年のドラフト1巡目でジャイアンツ入りすると早くから頭角を現し、2年目、3年目にはナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得するなど、一気にメジャー屈指の好投手となった。

 だが、そこをピークに徐々に成績が下降し、FAの権利を得る頃にはかつての投球を披露できなくなっていた。そして権利取得前の2013年オフに、FAでの流出と年俸を抑制したい球団から2年3500万ドル(約36億円)という契約を提示された。本来なら、大型契約を視野にFA市場で勝負したいところだが、当時の状況では強気にはいけない部分もあり、リンスカムはジャイアンツとの契約を選択した。

 その後もデビュー当時のようなピッチングはできず、初めてFA選手として市場に出たのは2015年オフの年齢が31歳の時。その年のシーズンでは7勝4敗、防御率4.13とまずまずの成績を残したが、パフォーマンスが下降曲線を描いていたリンスカムには買い手は中々見つからず。契約は開幕後の5月までもつれ込み、結果的に単年で年俸も250万ドル(約2億6000万円)というものだった。

 今もベイリーは現役だが、昨年までに稼いだ年俸の総額は9813万4500ドル(約102億円)。一方、リンスカムは1億255万5000ドル(約107億円)とほぼ同額だ。リンスカムはサイ・ヤング賞2回のほか、奪三振王3回、オールスター選出4度回など数々の輝かしい功績を残したが、早熟だったがために割を食ってしまった感は否めない。逆にベイリーはタイトルも球宴選出もなしだが、FAのタイミングもよく、給料的には実力以上のもの手にした言ってもいい。

 今回挙げたのはほんの一例だが、FA選手を筆頭にメジャーでは移籍のタイミング次第で年俸がいかに大きく変わってくるかがお分かりいけただろう。当然、選手たちは安定を得るため長期契約を望むのは理解できるが、もう少しFAの時期などに大きく左右されない年俸の仕組みができてもいい気がする。(※円換算の金額は全て現在のレートで算出)