また、日本の投手が大リーグに移籍する際によく注目されるのが、ボールの質の違いだ。

 大リーグのボールは縫い目が高く、指先が滑りやすいとされる。

「日本のボールの方が明らかに投げやすい。指先のしっとり感が違いますし、縫い目の山もきれいにそろっています。田中もメジャー時代よりコントロールしやすくなるのは間違いありません。ただ、日本のボールは飛びやすいと言われるうえに、ソフトバンクロッテは本拠地を狭くして本塁打が出やすくなったので、かつて日本にいた時よりはリスクは大きいかもしれません」(村上氏)

 日本一に輝いた2013年の田中の成績を見ると、登板28試合で24勝0敗、防御率1.27と驚異的な数字を残した。剛腕のイメージだが、9イニングあたりの与四球数はリーグで最も少ない1.36と、抜きんでた制球力が光った。

 ただ、当時バッテリーを組んだ嶋基宏はヤクルトに移籍した。田中の最大の“理解者”はもう楽天にはいない。

「田中もベテランの域ですから、捕手にリードしてもらうのではなく、自分で投球を組み立てていけるので心配はいらないと思います。それにより、若い捕手も成長するでしょう。調整さえうまくいけば、15勝は最低ノルマとして、18から20は勝てるはず」(村上氏)

 東日本大震災から10年目となる今季。仙台の地で、再び伝説を刻むか。(AERAdot.編集部)