上田晋也(C)朝日新聞社
上田晋也(C)朝日新聞社

 芸人で初めてテレビ番組の司会を任されたのは萩本欽一であると言われている。黎明期のテレビでは、番組の進行役を務めるのは局のアナウンサーと相場が決まっていた。

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 そんな中で1971年に始まった『スター誕生!』の司会者として萩本が抜擢された。芸人が司会を務めるという異例のキャスティングが話題を呼び、ここから芸人MCの歴史が始まった。

 現在では、テレビに出る芸人の出世コースの頂点にMCがあるとされている。「いつか自分の名前のついた冠番組を持って、そこでMCをやりたい」という夢を多くの芸人が抱いてきた。

 MCの仕事はサッカーで言うとMF(ミッドフィルダー)のポジションにあたる。フィールド全体を見渡して味方に指示を出し、状況に応じて攻撃のアシストをしたり、守備に回ったりする。ときには自分が前に出てシュートを打つこともある。

 芸人MCにもさまざまなタイプがいる。例えば、明石家さんまは典型的な「超攻撃型MF」である。ひな壇にいるタレントに話を振り、しばらくしゃべらせた後、最後は自分でオチをつける。俳優やアイドルや一般人など、バラエティ慣れしていない人がオチのない話をしたときにも、さんまはリアクションやフォローによってそこに無理矢理オチをつけて笑いに持っていく。

 一方、ほとんどの芸人MCはそこまで攻撃に特化していないことが多い。そのため、その仕事ぶりは普段は地味で目立たなかったりする。それが浮き彫りになるのは、そこに人の目が集まるような特殊な状況だけだ。

 くりぃむしちゅーの上田晋也は、現役の芸人MCの中でも最高峰の実力と実績を誇っている。バラエティ色の強い番組からスポーツ番組や硬い番組まで、幅広いジャンルに対応できる能力を持っている。

 司会者というのは普段は目立たない存在である。特に、上田のように常に数多くの番組を持っているような人は、その存在があまりにも日常に溶け込んでいるため、改めてその存在が脚光を浴びることもない。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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