一方で、今季から始まるWEリーグでは、なでしこリーグとは傾向が変わる可能性もある。そのカギは、アマチュアリーグからプロリーグへの移行にある。

 2020年度のなでしこリーグベストイレブンに移籍初年度の選手として唯一、名前を連ねた田中美南(INAC神戸レオネッサ)は、「大きなチャレンジ精神で臨んで、こういう大きな賞をもらえてうれしかった」。受賞の要因については「チームメートや監督に助けられたのはもちろんですが、ベレーザの時に比べて、もう少し下がったところでの関りが増え、連携がとれたということ。そして、個人で打開していくところが例年に比べて多かった。そのあたりを評価してもらえたのではないかと思います」と自己分析している。

 I神戸では、田中に限らず、加入1、2年目の選手の活躍が目立つ。新人賞は過去5シーズンで4人(杉田妃和、福田ゆい、三浦紗津紀(※2020シーズンからアルビレックス新潟レディース)、水野蕗奈)が受賞している。リーグ初制覇の2011シーズンも、日テレから獲得した澤穂希らの活躍が光った。他チームでは、新加入選手の多くが、新しい職場への適応など、オフの部分にリソースを割かなければいけなかった。I神戸ではプロ、セミプロ選手として、サッカーにほとんどの時間を割けた。その差が大きかった。

 WEリーグのスタートで、同リーグ所属選手のほとんどはプロ契約を結び、これまでのように仕事をしながらプレーする選手は少なくなる。サッカーに集中し、効果的なトレーニングができれば、それだけ短い日数で連携、戦術を向上できるし、意思の疎通も図れる。各チームでこうした取り組みができるようになったWEリーグでは、移籍初年度の選手が活躍するケースが増えるだろう。

 さらに、今季は、秋春制への移行で生まれた開幕までの約半年間という長い準備期間がある。新規参入の2チームや、なでしこリーグ2部から参戦するちふれASエルフェン埼玉やAC長野パルセイロ・レディースが大きな化学変化を起こし、浦和をはじめとする昨季の上位チームを倒すシーンが見られるかも知れない。

 2015年から2019年まで5連覇した日テレや、2011年から2013年まで3連覇したI神戸のように、浦和が長期政権を築き上げるのか。それとも、他のチームがこれをストップするか。WEリーグ初年度の女王をめぐる争いは、開幕の半年以上前から楽しみだ。(文・西森彰)