凍結療法。画像で位置を確認しながら、先端がマイナス100度になる専用の針を刺し、腎がんを凍結し死滅させる(イラスト/今崎和広)
凍結療法。画像で位置を確認しながら、先端がマイナス100度になる専用の針を刺し、腎がんを凍結し死滅させる(イラスト/今崎和広)
腎がんデータ(※週刊朝日2021年2月5日号より)週刊朝日ムックでは、がんの手術に関して、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキング。一部は特設サイトで無料公開しています。「手術数でわかるいい病院」
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 腫瘍が小さいうちに見つかれば、治りやすい腎がん。部分切除の場合、ロボット手術を実施するケースが増えている。高齢などで手術が難しい場合は、よりからだへの負担が少ない凍結療法という選択肢もある。

【データ】男性と女性どちらかかりやすい?症状は?

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 腹部の超音波(エコー)検査で無症状の早期がんが見つかりやすい腎がん。4センチ以下で見つかった場合、10年生存率は95%を超える。

 腎がんの治療は、手術が第一選択となる。かつては、二つある腎臓のうち、がんがある側の腎臓をすべて切除する「根治的腎摘除術(全摘)」が主流だった。しかし近年は、画像診断の技術が向上して小さい腫瘍が見つかるようになり、がんがある場所だけを部分的に取り除く「腎部分切除術」を実施するケースが増えている。

 腎臓は、主に血液をろ過して老廃物や余分な塩分を尿として出す機能を担っている。片側の腎臓を全摘しても、もう片方の腎臓が正常であればまだ機能的に余裕がある。早期腎がんに対して全摘と部分切除をした場合を比較すると、術後に腎がんが原因で亡くなる比率はどちらも同様に低い。

 しかし、全摘した場合のほうが、心血管系の病気による死亡が増えることが明らかになっている。全摘は部分切除をした場合に比べて将来、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高くなる。CKDは心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる心血管疾患を引き起こす因子になるためだ。

 このため、「腎癌診療ガイドライン」では「4センチ以下の腫瘍にはできるかぎり」「4~7センチの腫瘍でも可能であれば」、部分切除が推奨されている。がん研有明病院泌尿器科部長の米瀬淳二医師はこう話す。

「腫瘍の大きさが7センチ以下であれば、どちらを選択するか、症例ごとに検討します。腎臓の中央にある場合、奥にくい込んでいる場合などは、たとえ小さくても腫瘍の確実な切除と部分切除後の腎臓の機能を考えると、全摘が適している場合もあります」

 全摘をした場合は、血圧をコントロールする、塩分を控えるなど、残った腎臓を大事にする生活が重要になる。

 部分切除のデメリットは、全摘に比べて手術の難度が高くなることだ。

「腎臓は血流が非常に豊富な臓器であり、腎がんの切除と切除後の腎臓の縫合や止血のため、多くの場合、一時的に腎臓の動脈の血流を遮断(阻血)する必要があります」(米瀬医師)

■部分切除の難点をロボットがカバー

 一般的に阻血時間が25分を超えて長くなるほど腎臓へのダメージが大きくなる。腎臓を冷却するとダメージは減らせるので、開腹手術では腎臓を氷で冷やしながら手術するが、従来の腹腔鏡手術では、十分に冷やせなかった。さらに腹腔鏡手術は器具の操作が難しく、短時間での手術が困難だった。

 そこで手術支援ロボット・ダビンチを使用した腹腔鏡手術が、2016年から保険適用され、普及している。京都府立医科大学病院泌尿器科准教授の本郷文弥医師は、そのメリットについてこう話す。

「切除から縫合までを素早くできるので、阻血時間を25分以内におさめることができます。部分切除はロボットで実施するのが主流になりつつあります」

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保険適用外になる腫瘍の大きさは?