この状況の中でも、コロナが収まることを期待して、東京オリンピック・パラリンピックを開いたほうがいい理由を、具体的に提示してくれたら、世論調査の数字って変わってくると思うんです。「無理に開催することによって、どっかの企業が大きな損をするんでしょ!?」と思ってる人も多いんじゃないか。もし開催できなかった時に、どこかの企業とかじゃなくて、「日本がどうなるのか?」それをちゃんと説明してくれたらいいんだと思う。

 今、少なくとも国民がネガティブであることを認めて、オフィシャルに発信してくれるだけで、信用したくなる気がする。例えば、「オリンピック・パラリンピックの歴史の中で、これほど開催を国民に歓迎されなかった大会があるだろうか?だけど、その中で、やるべきなのです」と、そんなCMを流したらいいのに。

 コロナの情報が日に日に変わってくる中、みんな、4月のことすら分からないというのが正直な気持ちだろう。その上で夏のことを「大丈夫です!開催するんです」とごり押しされても心から応援できない。

 わかってます。開催したら、アスリートの戦いに、その姿に絶対感動するんです。熱くなるんです。絶対そうなるんです。

 だからこそ、今の時点で、国民が東京オリンピック・パラリンピックの開催をもう少し前向きになるように導いてくれたらいいのになと勝手に思っています。

 と、ここまで書いて「そんなことわかってるよ」という方がいたら申し訳ございません。僕だって熱くなりたい。一つになりたい。でも、不安なんです。人間だもの。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中

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鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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