「もともと深夜が稼ぎ時だったので、協力金では全然足りません。店を開けているのはスタッフが食べていくため、ただそれだけです。いま店がつぶれたとして、スタッフが働ける他の店なんてそうそうないですから」

 別の立ち飲み居酒屋も午後8時閉店にはしているが、酒類を含めたラストオーダーは午後7時半ごろまで引っ張っている。

「7時近くに入ってくるお客さんがいるし、店としても少しでも売り上げを増やすためです。バイトの学生たちにシフトを減らしてもらっている中で、ラストオーダーを伸ばして出せる売り上げで、ひとり分のシフトを増やせるかもしれない。雇用を守るために必死ですから、30分くらいなら別にやましいとは思いません」

 新型コロナの感染状況が目に見えては改善せず、医療機関の逼迫(ひっぱく)が続く中、緊急事態宣言を延長する案が政府、与党内で浮上している。

「延長になったら、いまの不公平な協力金では経営が限界に達して、遅くまで開ける判断をする店が増えると思いますよ」(前出の居酒屋店主)

 思いを話してくれた店は、すべて「協力金は申請するつもり」と答えた。これに対して「ズルをしている」と非難することは簡単だが、「従業員を守るため」だったり、損得を超えたところで「客のため」に続けているという現実もあるようだ。

 時短要請がいつまで続くのか不透明な中、店主たちの苦悩は続く。

(取材・文=AERAdot.編集部・國府田英之)