■鬼殺隊の構成員

<柱とは鬼殺隊の中で最も位の高い9名の剣士である 柱より下の階級の者たちは恐ろしい早さで殺されていくが 彼らは違う>(6巻・第46話「鬼殺隊柱合裁判」)

 これは、鬼殺隊構成員の死亡者の割合を端的に示す一文である。コミックス1巻には、鬼殺隊が「数百名」で構成されていると書かれており、柱を除いた、その数百名という膨大な数が、短期間で鬼との戦いのうちに命を落としていることがわかる。

<鬼殺隊は生身の体で鬼に立ち向かう 人であるから傷の治りも遅く 失った手足が元に戻ることもない それでも鬼に立ち向かう 人を守るために>(1巻・第4話「炭治郎日記・前編」)

 この説明に加えられている挿絵では、鬼殺隊の隊員と思しき人物が、おびただしい血を流しながらも、片手で「日輪刀」をかまえている場面が描かれている。

 鬼殺隊の構成員には、隊士になるための試験「最終選別」を受ける前の者たち、剣術に優れず鬼殺隊の後方支援を行う「隠」(かくし)という集団もいるが、これらの構成員のほぼ全てが、鬼に関連する事件によって、大きな被害に遭っている。

■「鬼殺」の動機・鬼殺隊の責務

鬼滅の刃』は主人公の炭治郎と妹・禰豆子をはじめとし、隊士たちの平均年齢がきわめて若いこと、鬼との戦いの中で他者のために命をなげうつ者の数の多さから、「個人の命を軽んじすぎている」「戦時中の美化された特攻のような描写だ」と非難されたことがあった。

 しかし、『鬼滅の刃』で戦う者たちは、命令によって徴収された兵士ではなく、自らの志願によって隊士になった者だけである。この点が「戦時下」とは大きく違う。これには「特攻隊も自らの志願ではないか」との反論もあろうが、鬼殺隊の隊士は、本人に戦闘の意思がなくなれば、「いつでも」隊士を辞めることができる。自らの意思で前線を退くことができるのだ。

 そのような「自由な選択」ができるにもかかわらず、鬼殺隊には、自ら戦いに赴く者が数多く存在する。そんな鬼殺隊の隊士たちを、鬼の総領である鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)は「異常者の集まりだ」と吐き捨てる。

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「俺より先に死ぬんじゃねえ!!」(不死川実弥)