それから約2年間、毎週、どこに行っても長州と対戦したけど、一度も飽きることがなかった。すごく楽しくて、プロレスをやっているという実感があったね。「今日はこうやって仕掛けたら、長州は驚くかな?」「これをやったら長州はどうやって受けるだろうか」なんてことをいつも考えていて、長州もそれを受けて返してきた。アマレスのバックボーンもあって実力があるから、俺が仕掛けたことは全部受けて返してくれる。おかげで俺のプロレスのレベルがグッと上がった2年間だった。その後の自分の試合を見ても明らかに自信を持って戦っているのがわかるからね。歌手が紅白歌合戦に出場したくらいに自信がついたんじゃないか。

 当時の全日本はNWAのアメリカンスタイルの試合が主流で、最後のフォールに向けてじっくり試合を組み立て行くスタイルだった。俺は技のバリエーションも少なく、まだ実力もなかったから、全日本のスタイルは苦手だったのかもね。長州の試合開始と同時にガシャーン! と来て、エネルギーを一気に放出するスタイルが相撲出身の俺には合っていたんだ。あのときは長州だけじゃく、アニマル浜口さんや谷津嘉章もムキになって向かって来ていたなぁ。

 長州の方が俺より年下だけど、彼の方が先にデビューしている分だけ、俺は先輩だぞっという感じを今でもグイグイ出してくるよ(笑)。一緒に飲んでいても自分が先に酔っぱらったような仕草は絶対に見せないし、今だって会ったときに「最近飲んでる?」って聞くと、「全然飲んでないよ。泡盛が好きで飲んでるくらいかな~」とか「朝まで飲んで一睡もしていないからちょっと寝るわ!」なんて言ったり。とにかく負けず嫌いでカマしてくるんだよね……。

 それでもずいぶん柔らかくなったよ。東京ドームのリングに孫と一緒に上がったり、YouTubeやTwitterでいろいろやったりね。俺からしたら「えー! 長州、そんなことするの!?」だけど、そのギャップがいいんだろうね。「飛ぶぞ!」だって若い子の間でも人気があるんだろう? 彼の発言は独特の感性があるよね。まぁ、すべて計算してやっているよ。だって彼は大卒だから! 俺と藤波選手は中卒だから馬鹿正直なんだよ(笑)。

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スタン・ハンセンや昔戦った相手が元気だと俺も元気に!