全生徒の約半数が利用する、不二聖心の寄宿舎(筆者撮影)
全生徒の約半数が利用する、不二聖心の寄宿舎(筆者撮影)
「チャイルド」と呼ばれる中1生(前列4人と後列左端)と、彼女たちのお世話係である高3生「エンジェル」(筆者撮影)
「チャイルド」と呼ばれる中1生(前列4人と後列左端)と、彼女たちのお世話係である高3生「エンジェル」(筆者撮影)
寄宿舎内のランドリールーム(筆者撮影)
寄宿舎内のランドリールーム(筆者撮影)

■約半数の生徒が「週末帰宅型」の寄宿生活を送る

【写真】聖心女子大学出身の有名作家といえばこの人

 静岡県裾野市。富士山麓にあるこの地域に、お嬢様学校として名高い「聖心女子学院」の姉妹校がある。2020年に創基100年を迎えた伝統あるカトリック系の女子ミッションスクールである「不二聖心女子学院中学校・高等学校」だ。

 東京ドーム15個分、敷地面積約21万坪の緑豊かなキャンパスは圧巻だ。校門から本館まで約1kmあるというのが広大さを物語る。富士山をはじめとした山々に囲まれた敷地内には、不二農園と名づけられた茶畑、ゴルフクラブの練習にも活用されるオークヒル、生徒たちの課外活動の場である「共生の森」などが広がっている。野生の鹿やウサギなどが顔をのぞかせることもあるそうだ。

 同校には中高合わせて491人が在学しているが、そのうち、地元・静岡県在住は228人と半数以下だ。静岡県に次ぐのは東京都102人、神奈川県83人、愛知県25人である。

 なぜ、こんなにも県外在住の生徒が多いのか。

 この不二聖心女子学院の生徒の約半数が、寄宿舎で生活しているからだ。彼女たちは、平日は寄宿舎に滞在し、金曜日の午後に帰途に就く。土日を自宅で過ごし、日曜日の午後には学校に向けて出立するという、全国的にも珍しい「週末帰宅型」の寄宿舎生活を送っている。

 このスタイルは現代の家庭環境にフィットしている面がある。

 両親が共働きで、平日は子どもたちとなかなか接する機会を持てない家庭が増えている。ならば、平日は思い切って学校に預け、土日でわが子と触れ合う機会を持とうと考える保護者が多いのもうなずける。実際に、同校の寄宿生の数は増加の一途をたどっていて、新しい寄宿舎を増築したばかりだ。

■親元から離れることで「大人」に成長する

 地元・裾野市在住ながら「自立したい」と自ら望んで寄宿生活を送る、ある中1生はほほ笑む。

「ここで生活するようになってから、苦手な食べ物がなくなりました。そして、みんなで共同生活することで、相手がいまどんな気持ちでいるのだろう、どんなふうに声をかければいいのだろう……。そんなふうに、相手の視点でものを考えられるようになったと思います」

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矢野耕平

矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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