あと、実際に感染リスクがどれくらいあるのかということも、当然大事なんですけど、それと同じくらい大事なのが“お客さんの気持ち”なんです。

 例えば、検温や消毒、その他の対策を徹底していれば、短時間無言でスタッフと少し近くなっても、現実的にはそこまで感染リスクはないのかもしれません。

 でも、それを見ているお客さんが「あんなに近づいて大丈夫なの?」と思った時点で、もう純粋には楽しめない。お客さんがそう感じるならば、それはもうできない。

 エンターテインメントならではの繊細さもありますし、そういう部分も加味すると、結局、7割くらいのものは難しくなってしまうんですよね。

 ですので、今、できることは“蜜を避けて、ステージ内で完結するもの”。その方向で楽しんでいただくしかないと考えています。

 万難を排して、3月6日に東京・よみうりホールで約1年ぶりにライブをやるんですけど、そこでは歌手の方に歌っていただくこととイリュージョンを融合させたり、これまでとは違う楽しさやワクワクを作り出せたらなとは思っているんです。

 一番多い時で年間300ステージくらいはやってきましたけど、この1年は完全にストップしてしまいました。

 ただ、その間もオファーは本当に、本当に、たくさんいただいていたんです。できるかどうかは分からないし、可能性的には厳しいかもしれないけど「なんとか、来てもらえませんか」という声を各所からいただいてきたんです。

 結果的に公演ができない状況が続いてしまったんですけど、コロナ禍でも、もしくは、コロナ禍だからこそ、それだけ求めてくださるということが何よりありがたかったです。

 3月に開催予定の公演、実は業界内での注目も集まっているんです。この状況でイリュージョンのライブが成立するのか。そこが試金石として見られている部分もありますし、何としても成功させたいと思っています。一つの可能性を提示する意味でも。

 今のお話もそうだったかもしれませんけど、私、すごくポジティブな考え方ばっかりするので、イリュージョン以外に、そういう考え方を今こそ発信できたらなと思っているんです。

 人はなかなか強くはなれない。でも、今は精神的なものがすごく大切な世の中になっている。そんな中、何があっても、私はポジティブですから(笑)。どこまでお役に立てるかわかりませんけど、そのマインドも今はお渡しする意味があるのかなと思っています。

                          (中西正男)

著者プロフィールを見る
中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

中西正男の記事一覧はこちら