日米で23年間に渡って投げ続けたレジェンド投手。先発、ブルペンとあらゆる役割をこなし、メジャーのスター投手たちとも投手論を交わした。

「自分の経験を理論で理解したうえで、言葉で説明できるようになりたい」(吉井)

 一時期、現場から離れた際には筑波大学大学院へ通い体育学を専攻した。実技と理論の両方に裏打ちされたコーチングには説得力があり、結果に直結するのもわかる。

「大学院入学の情報が出た時には、何でそんなことするのか?という声も聞かれた。今となってはその方法は間違いではなく、あとに続くコーチたちも増加している。また同時期に入学した工藤公康(ソフトバンク監督)は4年連続日本一に輝いた。仁志敏久も今年からDeNA2軍監督へ就任する。日本球界でのコーチング、マネージメントへの意識が変わり始めている。現状、吉井に次ぐ投手コーチの人材は見当たらないので、下世話な話で言うと今後も食いっぱぐれはない。仮にロッテを退団した場合、引く手あまたのはず」(ソフトバンク時代の担当記者)

 投手コーチ以外でも評価の高い人物がいる。それは現在巨人の野手総合コーチを務める石井琢朗だ。

 選手としては横浜ベイスターズ時代(現DeNA)に、チーム38年ぶりの日本一に貢献。09年からは広島に移籍し、現役引退後は同球団でコーチ人生を開始した。当初は守備・走塁部門を任されたが16年から打撃専門となった。リーグ2連覇を達成した17年限りで退団し、翌年からはヤクルト1軍打撃コーチに就任。前年リーグワーストだったチーム打率(.234)が、リーグトップ(.266)に上昇するなど、結果を残した。

「打撃技術の高さには定評があった。また誰にでも分け隔てなく気を配れる性格はコーチ向き。現役時代から女性にモテたのがわかるし、選手たちにも慕われるはず。経験を生かした打撃論は引き出しが多く、打者のレベルに合わせて様々な指導方法を持っている。選手が納得するまで理論で語り、実際にやってみせる。キャンプでは朝の早出から居残りの最後まで、石井の姿は常にグラウンドにあった」(広島時代の担当記者)

 先述したようにヤクルト時代も変わらぬ指導力を発揮、村上宗隆など若手の底上げに尽力した。昨年からは同様に世代交代が必須の巨人へ移った。

「若手を1軍レベルの選手へ引き上げる技量は素晴らしい。石井本人もそのあたりは理解しており、家庭問題もあったが広島を退団したのは1つの区切りだったのではないか。当時ヤクルト以外の数球団からもコーチ就任の打診を受けており、その中には巨人も含まれていた。坂本勇人がベテランの域に差し掛かっており、その下の世代を育てるのが急務。岡本和真とともに打線の核を任せられる人材育成には最適なコーチ」(巨人担当記者)

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他にもコーチとして評価が高いのは?