一方の野手は投手と比べると不安材料が目立つというのが現状だ。昨年は4人が規定打席に到達しているが、若手と言えるのは栗原陵矢だけで残りの3人は中堅からベテランに差し掛かっている。助っ人のデスパイネ、グラシアル、バレンティンの3人も全員が今年で35歳以上ということを考えると、ここからの上積みは考えづらいだろう。

 栗原以外の若手を見てみると盗塁王に輝いた周東佑京を筆頭に川瀬晃、二軍で結果を残した佐藤直樹、三森大貴など足を使える選手の目途は立ってきたが、大砲候補となると育成選手出身のリチャードが目立つくらいである。昨年のドラフトでは1位から3位まで強打者タイプの高校生野手を揃えたが、一軍の戦力になるまでは当然時間がかかる。この1、2年で一昨年のように柳田悠岐が長期離脱するような事態が発生すると、その穴を埋めるのは難しいと言えるだろう。

 もちろん球団もそのことは分かっており、前述したように昨年のドラフト戦略にも野手を底上げしようという意図が強く感じられる。かつてダイエー時代に強いホークスの礎を築いた城島健司(昨年から会長付特別アドバイザー)、小久保裕紀(今年からヘッドコーチ)の2人を招聘したのもその一環と言える。ここからいかにチームの中心となる野手を早く一軍の戦力にすることができるのか、その点がホークスの黄金時代が続くかの大きなカギとなってくることは間違いないだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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