使い終わった使い捨てカイロの再利用としては、消臭剤としての利用がまず考えられます。理由は活性炭が入っており、活性炭は臭いを吸収する作用があるからです。そのまま、靴に入れてもいいでしょう。効果は少ないのですが、吸水性樹脂が入っていますので除湿剤としての利用も考えられます。使い終わった使い捨てカイロを水で洗い塩分を取り除き、残りを園芸用の土として使うことも可能です。使い捨てカイロに入っているバ-ミキュライトは元々観葉植物の土として使われていますので。

 たかがカイロですが、化学と密接に関係していることが分かります。少しでも化学的な視点で身の回りの生活を眺めてみると、結構楽しくなるものです。生活の智慧と言ってもいいかもしれません。

違うタイプのカイロ 「ハクキンカイロ」と「エコカイロ」の正体

 冒頭に登場した「ハクキンカイロ」ですが、これは、使い捨てカイロが登場するまで広く愛用されてきました。この発熱保温の原理は化学と密接に関係しており、「ハクキン」は貴金属の白金、そうです、あのプラチナです。白金は化学反応の触媒として広く利用され、例えば、ガソリン車の排気口から出る有害物質(窒素酸化物など)を浄化する触媒としても使われています。車にはこの触媒が搭載されています。

 ハクキンカイロは、注油したベンジン(炭素数5~10の炭化水素、原油を精製して得られ、ナフサや石油エーテルなどとも呼ばれる、衣類の汚れ、和服の襟元などを落とす溶剤)を気化させ、白金触媒表面で穏やかにCO2と水に酸化させるときに発生する熱(触媒燃焼熱)を利用しています。使う際に、白金触媒を130度以上で加熱するだけで、ベンジンを加熱燃焼させているわけではないので、クリーンな発熱で、一般的な燃焼に伴う窒素酸化物がほとんど発生しません。ベンジンを注油すれば何度でも使える利点があります。使い捨てカイロの13倍もの熱量を発生しますので、寒い中のスポーツ各種や仕事に適しています。

 ハクキンカイロは80年以上の歴史があり、今でも発売されていることは驚きです。当時から化学的なことが分かっていたのか不思議です。しかし、ハクキンカイロは、炭化水素のベンジン(燃料)を使うこと、熱くなりすぎ、やけどの危険性があり、また容器が金属製であることから、その使い勝手の悪さがあって、現在は使い捨てカイロが広く使われています。

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「エコカイロ」はなぜ繰り返し使える?