ジャスミンさんは、ご自身のことを「母親失格でしょうが」と書かれています。「母親失格ですが」と断定せず、「でしょうが」とあいまいにしている点も気になりますが、一番、知りたいのは、どういう点で「母親失格でしょうが」と思ったのでしょうか。

 僕には、「無名の大学に入った息子を恥ずかしく思う」からではなく、「息子の学歴を通じて、自分を確認し、自分を承認し、世間に対して自分の価値をアピールしたい」と思っているからなんじゃないかと感じるのです。

 ジャスミンさん。きつい言い方を続けました。申し訳ありません。

 僕の判断が全然違っていると思われても結構です。いえ、違っていて欲しいと思います。

 でも、ジャスミンさんの考え方の中心が、息子さんの幸せ、息子さんの希望、息子さんの意志ではなく、近所の評判、世間体、息子さんを通じての自己確認である限り、ジャスミンさんと息子さんの距離はどんどん遠くなっていくと思います。そして、お互いが不幸になると、僕は心配しているのです。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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