巨人以外の球団で近い将来面白いチームになりそうなのが阪神中日だ。阪神はまず4番の大山悠輔、1番の近本光司という打線の核となる二人の存在が大きい。特に大山はチームが長年待ち望んだ日本人の大砲であり、昨年の活躍と年齢を考えると最低でも5年間は4番を任せることができそうだ。

 そして更に楽しみなのが井上広大、佐藤輝明という若手の大型野手二人だ。この二人が持ち味の長打力を残しながら上手く成長してくれば、外国人打者に頼らない強力クリーンアップが誕生することも夢ではない。またリードオフマンタイプでは小幡竜平の成長も著しいものがある。投手陣は伝統的に安定しており、西純矢など楽しみな若手も控えているのも大きなプラス要因だ。藤浪晋太郎が復活を遂げるようなことがあれば、投打ともにスケールのあるチームになることも期待できるだろう。

 一方の中日も投手、野手ともに楽しみな若手が非常に多い印象を受ける。投手では25歳前後に柳裕也、岡野祐一郎、笠原祥太郎、梅津晃大、勝野昌慶、鈴木博志、小笠原慎之介などが揃い、22歳以下の若手では清水達也、山本拓実も一軍である程度結果を残している。ここにドラフトでは高校ナンバーワン投手の高橋宏斗と大学球界屈指の本格派である森博人が加わり、更に楽しみな要素が増えた。数年後はリーグ1の投手王国となることも十分に期待できる。そうなるとやはり重要になってくるのが野手で太い柱となる選手の確立である。期待したいのは根尾昂、石川昂弥、岡林勇希の三人だ。彼らが早い段階でレギュラーを獲得できるかどうかによって、チームの将来は大きく変わってくるはずだ。

 今年だけを見れば巨人が優勢だが、数年後は阪神と中日がセ・リーグの覇権争いをしていることも十分に考えられる。ただこの3チームはプロ野球の中でも老舗と言える球団であるが、2010年代以降はパ・リーグには歯が立たず、広島とDeNAの後塵を拝するなど停滞感が強いことは間違いない。この3球団がまずセ・リーグがパ・リーグに後れをとっていることを認め、大きく変わるようなことがなければ現在の構図はしばらく続くことになりそうだ。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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