「人気選手の場合、結果を出さなくても年俸1500万円が採算分岐点と言われる。1軍未勝利だが(2019年に)11試合に登板した昨年が1600万円だったのも妥当な線。コロナ禍でどの球団も経営難。今年の1250万円は格安ともされるが高く感じてしまうほど。復帰の可能性があるとはいえ、日本ハムは思い切った決断。温情ではなく、可能性を見ているからではないか」(在京球団編成担当)

「現在の2軍でリハビリしている斎藤を取り上げても数字は取れない。特集を組んだりする番組などないだろう。『引退』となれば大々的に取り上げられる。それでも1年間契約をしたということは、球団は復活を期待しているからではないか。仮に復活となれば、ベタですが『フェニックス(=不死鳥)斎藤』とかで、大盛り上がりでしょうね」(在京テレビ局関係者)

 松坂大輔(現西武)が中日と契約した18年の例を見ても分かるが、1500万円前後ならばチケット、グッズなどの収入でペイできる。斎藤の来季年俸はそれを下回るが、世間的情勢を見れば高額であることは間違いない。また選手が露出すれば球団の宣伝になる、という考えもある。しかし以前はキャッチーなコメントも出していたが、それらも出尽くした感がある。商品価値がなくなれば、周囲の人々も波が引くようにいなくなる。これまでは『ハンカチ王子』ブランドの余韻はあったが、それすらなくなっている。球団もそれらを冷静に判断した上での契約だったはずだ。

「期待しているのは投手としての経験と精神力。アマとはいえ日本一を決める大舞台に、斎藤ほど数多く立った人間はいない。そして周囲から叩かれようと、めげずに現役を続行する精神面の図太さ。普通、ここまで叩かれれば心が折れる。そういった部分を評価しているのではないか。一部で話題になった横手投げ転向など、まだまだ選択肢はある」(日本ハム担当記者)

 高校から現在までの野球キャリアは天国から地獄のようだった。早稲田実業時代はライバルと言われた田中将大(昨季までヤンキース、当時は駒大苫小牧高)との対決が話題になった。夏の甲子園制覇の立役者となり、進学した早稲田大でも活躍。そして10年、4球団競合の末ドラフト1位で日本ハムに入団した。新人年には6勝を挙げ、翌12年には開幕投手にも抜擢された。完ぺきではないものの順調にプロのキャリアを歩んでいるかのように見えたが、そこまで甘くはなかった。加えて故障にも悩まされ、思うように投げられない日々が続いた。

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今シーズン奇跡的な復活はあるのか…