■読解力が優れている、日本の若者たち

 さらに基礎体力つけるにしても、字にふれるなら絵本や小説・実用書に限定せず、漫画だっていいのだということを、漫画オタクな私は声を大にして言いたいです。

 漫画『ワンピース』の作者である尾田栄一郎先生は、「日本の若者は世界的に読解力が優れているというデータがある」ということ、そして「日本人の中でも漫画をよく読む人がすごいらしい」と、22巻のコメントに書いています。

「漫画なんて読んでいないで勉強しなさい!」と子どもをしかる親がいますが、私は、「漫画を読んでえらい!」と褒めてもいいのではないか、くらいに思っています。大人になると、娯楽や趣味として本を読む機会が増えてきますが、学生時代から自主的に文字のみの本を何冊も読むのは、なかなか大変なことではないでしょうか。しかし漫画なら、息抜きに楽しみながら読めます。

 私も、生まれて初めて自分が書店で選んで買った本は、『ドラゴンクエスト4コママンが劇場』。タイトルの通り、漫画なのです。前述した東大の人たちも、「本は読んでいなくても漫画なら読んでいた」という人が多数でした。ちなみに、開成からの東大医学部卒である夫も、昔から小説や実用書なんて読んだこともなく、とにかく漫画ばかりで育ったそうです。

 それでも入試の際、「これといって特別に現代文の勉強はせずに合格できた」とのこと。「漫画やゲームをやることで、いつのまにか言葉を覚えて語彙(ごい)が増えたり、書かれた内容を理解したりできるようになってくる」と言っていました。

■漫画にはまった途端、字をどんどん書き始める

 実際に私の息子も、ゲームで漢字を覚えていつのまにか読んでいますし、ママ友からも、「子どもが漫画にはまった途端、教えてもいない字をどんどん書き始めた」なんていう話を聞きます。

 そんなわけで、あえてお世話が大変な幼少期に無理して大量の絵本を読ませなくても、漫画で十分読解力はつきますし、「たくさんの本を読んだかどうか」が受験に関係するわけではないと結論づけて大丈夫そうです。

 最近では、『鬼滅の刃』が空前の大ブームを巻き起こし、普段は漫画を読まない層の人たちも、漫画を手にしていると聞きます。ことに、鬼滅の刃ではやたら難しい漢字が多く使われていますし、登場人物は複雑な過去を持つ人が多いです。読んでいるうちに、自然と語彙力や読解力をガッツリ鍛えられることでしょう。

 鬼退治のお話としては桃太郎の絵本が定番ですが、『鬼滅の刃』を読むのもなかなか得るものがあるのではないかと。まあ後者は、残酷なシーンが多いので、「別の意味」で子どもに読ませるべきなのかどうか、悩んでしまうところですが。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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