そして高校時代、五十幡と金子の二人を上回るスピードを見せていたのが、斎藤未来也(関東一→中央大)だ。1年秋からセンターのポジションを獲得すると、2年夏には5試合で11安打、4盗塁と活躍。凄まじかったのが3回戦の雪谷戦だ。6打席全ての結果とタイムを紹介したい。

第1打席:右中間スリーベース(10.82秒)
第2打席:セカンドゴロエラー(3.77秒)
第3打席:左中間ツーベース(7.89秒)
第4打席:サード送りバント(3.78秒)
第5打席:レフト前ヒット(4.11秒)
第6打席:キャッチャーバントヒット(3.60秒)

 スリーベースの10.82秒というのは大学生、社会人を含めても五十幡の10.58秒に次ぐタイムである。しかもこの時は滑り込むことなくベース付近でスピードを緩めており、最後まで全力で走っていたらもっと速いタイムとなったことは間違いないだろう。また第3打席のツーベースも同様である。

 さらに第5打席のレフト前ヒットでも足を緩めておらず、走塁への意識の高さがうかがえる。この年の冬に本人に話を聞く機会があったが、小学校1年生で少年野球の練習に初めて参加した時には既に3年生より速かったとのこと。高校2年冬の時点では自分より速い選手を見たことはないとも話していた。

 斎藤は関東一で同学年だった石橋康太(中日)とともにプロからも注目されていたが、志望届は提出せずに五十幡のいる中央大へ進学。1年時は途中出場5試合のみで1盗塁という数字に終わっていたが、昨年秋のリーグ戦では先発デビューを果たし、最終戦ではトップバッターとしてツーベースを含む2安打と活躍している。五十幡の抜けた今年は不動のリードオフマンとしての活躍を期待したい。

 比較的最近の選手が並んだが、選手のレベルが上がっていることに加えて、パ・リーグTVなどで各塁への到達タイムが一般的に認知された影響は大きいだろう。今後もここで紹介した三人を上回るようなスピードスターが出現する可能性も十分にあるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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