国学院栃木時代の金子莉久 (c)朝日新聞社
国学院栃木時代の金子莉久 (c)朝日新聞社

 筆者は一年で平均して約300試合アマチュア野球を現場で見ているが、基本的にドラフト候補となる有望選手を追いかけていることもあって、プロ選手顔負けのプレーを目撃することも少なくない。そこで今回はそんな驚きのパフォーマンスを見せたアマチュア選手について、ここ数年レベルアップが目覚ましい高校球児に絞って振り返ってみたいと思う。なお対象は筆者がデータをとり始めた2001年以降にプレーした選手としている。今回は走塁編だ。

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 走塁ではやはり五十幡亮汰(佐野日大→中央大→2020年日本ハム2位)を外すわけにはいかないだろう。中学時代から陸上の全国大会で100メートル、200メートルの二冠に輝いた選手として既に評判となっていたが、そのプレーを初めて見たのは高校1年秋の栃木県大会、国学院栃木戦だ。第一打席のセカンドゴロで一塁到達3.92秒、そして第4打席のバントヒットでは3.66秒という数字が記録として残っている。

 そして3年春の足利工大付戦ではライトオーバーのスリーベースを放ち、この時の三塁到達は10.95秒をマークしている。11秒を切るタイムは大学や社会人を含めても滅多に見られないものであり、そのスピードはやはりずば抜けたものがあった。ちなみに五十幡は大学3年秋の大学日本代表候補合宿と4年秋のリーグ戦ではスリーベースで10.58秒という規格外のタイムをマークしており、大学でもそのスピードを更に伸ばしたことがよく分かるだろう。

 そんな五十幡に匹敵するインパクトを残したのが、金子莉久(国学院栃木→白鴎大→JR東日本)だ。くしくも五十幡を初めて見た試合の対戦相手である国学院栃木に所属しており、同じく1番、センターとして出場している。この試合での金子は三度内野ゴロで一塁まで駆け抜けているが、そのタイムは3.89秒、3.78秒、3.88秒と五十幡を上回るものだった。金子の存在はこの試合まで知らず、五十幡に注目していたこともあって、その衝撃は今でも忘れることはない。

 金子は白鴎大でも早くからレギュラーとなり、その足を生かして3度の盗塁王と4度のベストナインに輝いている。特に3年時は春秋の24試合で26盗塁というすさまじい数字を残した。大学卒業後は社会人の名門であるJR東日本でプレー。1年目の昨年は都市対抗デビューを果たし、1回戦では2安打を放ってチームの勝利にも貢献している。来年以降もその足はチームの大きな武器になるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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五十嵐、金子を超えた高校生も!?