一方、「思う人」である恋愛対象だと意識している相手だと、格好をつけ、気取り、見栄を張り、怯え、身構えてしまう傾向があります。

 どんなに気合を入れてオシャレをしても、会話がぎこちないと関係は進まないですからね。

 どちらの態度が相手にとって魅力的に感じられるか、明らかですよね。

「思わぬ人」に見せる、自然体で、身構えない姿に惹かれてしまうのは、よくあることだろうと僕は思うのです。

 それが、「思う人には思われず、思わぬ人には思われる」という言葉になったんじゃないかと僕は考えるのです。

 あまやどりさんは、「自分を好いてくれる男性に限って恋愛対象として見ることができずとても辛い」と書かれていますが、順番が逆じゃないかと思います。

 恋愛対象として見ることができないからこそ、あまやどりさんはフランクにリラックスして会話し、結果として相手には魅力的に映り、あまやどりさんを好きになってしまうんじゃないかと。

 ですから、あまやどりさんの悩みはしごく当然のことなのです。

 あまやどりさんは、好きな人のことを書いていませんが、今はいないんですかね。それとも、ちょっとは良いなと思う人がいるけれど、恋愛に発展するとは思ってないんでしょうかね。

「無理をしてでもお付き合いしてみるべきでしょうか」と書かれていますが、無理して付き合う必要はありません。また、「自惚れている自分自身を見つめ直すべきでしょうか」と考える必要もありません。自惚れてなんかないからです。

 それより、「出会いが少ない」と書かれている現状を変える努力の方がいいんじゃないかと思います。

「街コン」とか「出会い系」のアプリとか「友達の紹介」とか、出会いを増やす方法は、今ではたくさんあると思います。

 無理して付き合おうという努力より、出会いを増やす努力の方がはるかに素敵だと思います。

 そこで、はっきりと恋愛対象だと思える人に会った時に、自分の態度が「恋愛対象だと思えない人」とどれぐらい違うか比べてみて下さい。

 恋愛対象と思えない人と同じぐらい、自然にリラックスして話せれば、きっと恋はうまくいくんじゃないですか? 幸運を祈ります。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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