■根底に「怒り」があるから言うべきことを言う

――選択的夫婦別姓についても、稲田さんは考えが変わったということですが、なぜですか?

稲田:困っている人の意見を聞いて、「選択的夫婦別姓」は反対だけれども、同姓を選んだ上で、公的に法的な裏付けをもって「婚前氏」を使うことができる制度にすればいいと思いました。

 私は29歳で結婚しましたが、弁護士としては5年ぐらいしかやっていなかったので、姓を変えてもそんなに不利益はなかったんです。だから、姓を変えたことで非常に不利益を被ってキャリアが続かないとか、いろいろなことでつらい目にあっている女性の気持ちは分かりませんでした。男性もほとんどの人が結婚しても姓を変えていません。結婚した夫婦のうち96%は女性が男性の姓に変えているので、男性はこの問題の深刻さに気づきませんよね。すごく困って陳情に来る女性が多くいるのに、そういう人たちを切り捨てるのは間違っているのではないかと思ったんです。

――稲田さんがリベラル的な動きをすることで、批判する人もいると思いますが、政治家の立場として損をすることにはなりませんか?

稲田:多分損はしているでしょうね。「あなたには言ってほしくなかった」みたいなことを言う人たちもいますし。そういう意味ではいばらの道かもしれないですね。でも、私の根底には「怒り」があるんです。これだけ多額のコロナ対策をやっているのに、ひとり親の特別給付ぐらいケチるなという怒りがあるから、そこは言うべきことを言います。

――あえてお聞きしますが、総理を目指す上で支持層を広げるためにやっているという計算もあるんでしょうか?

稲田:そういうことができる人だったらこんなに苦労はしません。いつも、もう少しうまく根回しをして、人が気を悪くしないような言い方をできたらどんなにいいかと思っています。どうしても言いたいことを言ってしまうんですね。ずいぶん反省もしています。

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日報問題は本当に「知らなかった」のか