これらにあてはまれば、必ず認知症だとまでは言い切れないが、何らかの異変のサインの可能性が大きい。認知症でなくても、生活に支障が出てくるので注意してほしい。

■ 水まくら、冷却シート、体温計はひとつのカゴに

 最後に、感染防止で短期間の帰省となった場合の、実家の片付けのコツを永井さんに聞いた。

「コロナ禍の帰省は少人数で短期間ということになるでしょうから、短い期間に少しでも実家を片づけるとしたら、食材の管理や衛生面からもキッチンを中心に片づけてください」

 そのほか、余力があればやっておきたいのは、認知症に限らず、“同じ目的で使うもの”はひとまとめにすること。例えば、「水まくら、熱を冷ます冷却シート、体温計」など、熱が出た際にすぐ対応できるようにカゴに入れておく。親がいちいちそれぞれのモノを探さなくてもすぐ取り出せる。

 お茶セット(湯飲み、急須、お茶など)、テレビセット(老眼鏡、リモコン、メモ帳とペンなど)、通院セット(診察券、保険証、バスのシニアパス、お薬手帳など)など、グルーピングしてあることで、忘れ物も減る。

「親と『これとこれが必要かなあ?』などと会話しながらまとめて、その置き場所を親が使いやすい場所に決めてもらうのがいいでしょう」

 また、冬は足元が寒いため、じゅうたんやマットなどの敷物を敷いている家も多いだろう。が、永井さんはこのじゅうたんやマットはできれば敷かないほうがいいと話す。

「じゅうたんやマットはホコリを吸い、菌の温床になります。また、マットで滑って転倒する事故も起きています。衛生面、転倒防止の面からも、じゅうたんやマットはおすすめしません」

 高齢者の家の片づけを専門に行ってきた片づけヘルパーのノウハウ。ぜひ参考にしていただきたい。(写真/永井美穂 取材・文/スローマリッジ取材班 時政美由紀)

永井美穂(ながい みほ)/1965年愛知県生まれ。認知症が進行した祖父を看取る際に、祖父が怖くて手を握ることができなかった後悔から、10年勤めたテレビ制作会社を辞め、介護の仕事をしようと決意。介護福祉士の資格取得後、10年間介護事務所に勤務。高齢者の在宅介護に従事する。環境整備、清潔保持から栄養管理にまでわたるきめ細やかな対応により、多くの家庭の信頼を得る。さらに整理収納アドバイザーの資格を取得し、高齢者が健康、安全に暮らせる環境作り、片づけを実践するために、日本初の「片づけヘルパー」となって活動を続けている。NHK『クローズアップ現代』『おはよう日本』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』など、メディアにも多数出演。著書に『日本初の片づけヘルパーが教える 親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)。永井美穂オフィシャルサイト https://www.mie-style.com/ NPO法人グレースケア(電話番号)0422-70-2805 https://g-care.org/